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麻酔を受けられる方へ

麻酔を受ける人のために

(第2版2015年4月1日改訂)

1.「麻酔」とは?

  手術や処置は、痛みや出血、その他のストレスを伴います。このストレスは、手術中だけの問題ではなく、手術後の回復にも影響を与えます。麻酔は、手術が安全に行えるように、手術によるストレスから患者さんの身体を守り、全身の状態を良好に維持することを最大の目的とした医療行為です。

2.「麻酔科医」の役割

  麻酔科医は、手術室に入室してから退室するまでそばに付き添って、患者さんの安全を守ります。さらに、手術中の麻酔管理に留まらず、手術前や手術後の患者さんの全身状態を維持・管理するために、細心の注意を払って診療を行います。

l 手術前:術前診察を行い、患者さんの病気、体質や、身体の状態を把握します。手術によって起こりうる身体の変化を予想し、対応する準備をします。

l 手術中:心臓の動きや血液のめぐりを整える循環管理、肺できちんとガスの交換ができる環境を整える呼吸管理、身体への最大の負担となる痛みを和らげる疼痛管理を中心に患者さんの全身状態を維持し、手術のストレスから患者さんを守ります。

l 手術後:麻酔から醒めた後の痛みの軽減、循環・呼吸状態の安定を図ります。手術や麻酔による合併症が生じていないか確認し、必要があれば対処します。

3.麻酔方法

 担当の麻酔科医が患者さんごとに最適な麻酔方法を選択します。ご希望があればお知らせ下さい。医学的に対応可能な場合は、ご希望を考慮いたします。

l 全身麻酔

l 区域麻酔(局所麻酔):脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔、神経ブロックなどが含まれます。

 それぞれ単独で行う場合と、複数の方法を組み合わせて行う場合があります。

4.麻酔のながれ

1)手術前日まで

 l 術前診察

 麻酔科医が病室を訪問して、麻酔を行う上で必要な診察を行います。麻酔法やその合併症について説明し、同意を頂きます。麻酔前に必要な処置などについてもお話しします。術式によっては、事前に外来で術前診察を行います。緊急時は術前診察を手術フロアで行います。

 未成年者や、ご自分で説明を受けたり同意をしたりすることが困難な患者さんは、御家族の同席が必要となりますので御協力をお願いいたします。

l 手術前の飲食や薬の服用について

   絶食・絶飲

 麻酔を行う際に胃の中に食べ物や水分が残っていると、嘔吐することがあります。嘔吐したものが気管に入ってしまうと重篤な肺炎を起こし、まれに命に関わることもあります。これを防ぐため、麻酔前の一定の時間は飲食を控えていただきます。

   常用薬

 患者さんが普段から服用されている薬の中には、手術に向けて継続しなければならない薬と、中止しなければならない薬があります。どの薬を継続・中止するかは、医師・看護師より説明があります。中止しなければならない薬を服用したことで、手術が延期される場合もあります。

2)手術当日

 l 当日の処置

 当日に手術や麻酔に必要な処置があります。病室で看護師が行いますのでご協力ください。手術フロアへの移動は、看護師が付き添って徒歩、車椅子、ストレッチャーなどで行います。これには、ご家族が付き添うことが出来ます。朝一番でない手術の患者さんは移動の連絡を病室でお待ち頂きます。

l 手術フロアに到着

 手術フロアに到着すると、入り口で手術室看護師、病棟看護師とともに確認を行います。お名前をフルネームでお答えください。ご家族の付き添いは、手術フロアの入口までとなります。緊急手術の場合には、ここで麻酔科医が説明と診察を行います。

 看護師の申し送りが済むと、手術室看護師とともに手術室に移動します。

l 手術室に入室

 手術室に入室し、手術台に移った後、心電図や血圧計、パルスオキシメータなどの生体情報モニターを身体に装着します。必要な場合には、点滴針などを留置します。

 麻酔を行う前に、診療科担当医、麻酔科担当医、看護師とともに、氏名、手術部位、術式など手術に関する事柄について確認を行います。

l 麻酔導入と手術の実施

 患者さんごとに選択した適切な麻酔方法で麻酔を導入した後、手術開始となります。麻酔覚醒まで、ずっと担当の麻酔科医がそばにいて、手術中の様々な身体の変化に対応します。

l 手術終了と回復室

 手術終了後、麻酔より覚醒させます。患者さんの全身状態が安定したら、手術フロアにある回復室に移り、生体情報モニターを再び装着して、経過を観察します。病室に帰る基準が満たされたことを医師が確認したら、迎えに来た病棟看護師に付き添われて回復室から病室に戻ります。ご家族は手術フロア入口まで患者さんを迎えに来ることができます。に戻ります。ご家族は手術フロア入口まで患者さんを迎えに来ることができます。

l 病室へ帰室後

 病室に戻った時には、麻酔の効果が完全に消失しているわけではありません。麻酔の効果は時間とともに消失します。麻酔科医は手術中から術後の痛みの対策を行なっていますが、手術の傷が痛むことがあります。痛みがある時には、看護師にお知らせ下さい。また、痛みやしびれが増強する、手や足が動かないなどの場合には、速やかに主治医や看護師にお知らせ下さい。

5.それぞれの麻酔方法

1)全身麻酔

 A.全身麻酔とは

 全身麻酔は、患者さんを痛みなどのストレスから守り、手術や検査を安全に行うために、痛みを取り、意識をなくし、身体を動かなくするものです。

 全身麻酔に使う薬は、呼吸や循環に影響を与えるため、麻酔中は患者さんのそばに麻酔担当医がおり、生体情報モニターや人工呼吸器などを用いて、患者さんの呼吸や循環の状態を安全に管理します。

B.全身麻酔の実際

B-1全身麻酔の開始

 はじめに口と鼻をおおうマスクで酸素を吸入します。次に点滴から麻酔薬を注入し、意識がなくなると、マスクで人工呼吸を始めます。麻酔が十分に深くなったところで、喉頭鏡という器具を使って、気管に柔らかい呼吸用の管(気管チューブ)を入れ、この気管チューブを通じて人工呼吸を続けます。手術や患者さんの状態によって、気管チューブ以外の呼吸器具を用いることもあります。

l 硬膜外麻酔、神経ブロックの併用

 術中、術後の痛みをやわらげるために、全身麻酔に硬膜外麻酔や神経ブロックを併用することがあります。(詳しくは別項をお読みください。)

B-2手術中の管理

 麻酔科医は、手術の刺激や患者さんの全身状態に応じて、輸液や輸血、薬剤の投与、呼吸の管理、体温の調節などを行い、手術を安全に進められるように患者さんの全身状態を維持します。

l 特殊な監視装置

 重い合併症のある患者さんや、身体への負担が大きな手術をする場合には、通常の生体情報モニター以外に、動脈にカテーテルを入れて血圧を測定したり、首や太ももの太い静脈からカテーテルを入れたり、口から超音波装置を入れて心臓を診たりすることがあります。これらの処置は全身麻酔の開始前後に行います。

B-3手術終了後

 手術が終了し、麻酔の必要がなくなると麻酔薬の投与を中止します。通常15分程度で意識が回復します。目が覚めた時には、気管チューブなどの呼吸器具により声が出しづらい状況です。患者さん自身で呼吸が十分に行えることや手をにぎるなどの簡単な指示に従えることを確認できたら、これらの器具を取ります。意識状態、血圧や脈拍、呼吸などが安定していることを確認して回復室に移ります。回復室で病室に帰る基準が満たされたことを医師が確認したら、病室に戻ります。

C.お子さんの場合

 お子さんの場合には、体内の水分の割合や臓器の機能などが成人と異なることなどの理由で、特別な配慮が必要です。

 手術前に身体の状態が良いことが非常に大切です。例えば、風邪ぎみである・下痢や嘔吐をしている・熱がある・発疹がある・最近気管支喘息の発作をおこした・最近予防接種を受けたことの情報は、お子さんの麻酔を安全に行うために極めて重要です。術前診察の際に保護者の方にお子さんの状態をお伺いしますのでご協力をお願いいたします。手術前日や当日の状態によっては、慎重に検討した上で、安全のために手術を延期させていただくこともありますのでご了承ください。

 お子さんの麻酔方法は、多くの場合は全身麻酔となります。麻酔の導入は、点滴から麻酔薬を注入する方法と、口と鼻にあてたマスクから麻酔薬を吸入する方法のどちらかで行います。点滴針を留置するときにお子さんは痛みを感じますが、即座に必要なお薬を投与することが出来る点で、点滴からの麻酔導入はマスクによる麻酔導入よりも安全性が高いとも言えます。マスクからの方法は眠ってから点滴針を留置するので、痛みを感じない一方で、導入時に臭いのある麻酔ガスをある程度の時間吸入することになります。

2)脊髄くも膜下麻酔・硬膜外麻酔

 A.脊髄くも膜下麻酔・硬膜外麻酔とは

 脊髄くも膜下麻酔・硬膜外麻酔とは、脊髄の近くに局所麻酔薬を注入し、手術や処置で生じる痛みの伝わる経路を遮断する方法です。

l 脊髄くも膜下麻酔

 背中より針を刺してくも膜下腔の脳脊髄液内に局所麻酔薬を注入し、下腹部や足などの下半身の感覚と動きを麻痺させます。

l 硬膜外麻酔

 脊髄が包まれている硬膜の外側にある硬膜外腔に局所麻酔薬を注入し、手術部位の感覚と動きを麻痺させます。背中から刺した針を通して硬膜外腔に細い管(カテーテル)を挿入し、麻酔薬をカテーテルから持続的に注入して、術後の痛みの治療にも用います。

B.脊髄くも膜下麻酔・硬膜外麻酔の実際

B-1脊髄くも膜下麻酔・硬膜外麻酔の開始

 脊髄くも膜下麻酔・硬膜外麻酔はいずれも背骨(脊椎)の間から針を刺して行う麻酔です。

 手術台の上で横に寝て、麻酔科医に背中を向けていただきます。背中を丸くして、膝をお腹に近づけ、へそをのぞき込むように首を曲げた体勢になっていただきます。麻酔科医が背中を触診し、消毒します。次に、背中に局所麻酔の注射をします。はじめは痛みを伴いますが、薬が効くとともに痛みが消えます。局所麻酔が効いたら麻酔の針を腰部あるいは胸部から刺します。痛みやしびれ、電気が走るような感じがあれば遠慮なくお伝え下さい。針を刺している途中に痛みなどで体が動いてしまうと、大変危険ですので注意して下さい。

l 脊髄くも膜下麻酔

 脊髄くも膜下麻酔では、腰部から麻酔の針を刺し、麻酔薬を注入します。薬が入ると、足先やおしりに温かいような、しびれるような感覚が広がってきます。数分後に麻酔の効果を確認するために冷たさや、痛みの感覚を調べます。どの程度感覚があるかおたずねしますのでお答え下さい。

 麻酔効果が不十分であった場合は、再び脊髄くも膜下麻酔を行うか、全身麻酔に変更するか麻酔担当医が判断して、安全に手術が行えるように対応いたします。

l 硬膜外麻酔

 硬膜外麻酔では手術の部位に応じて腰部あるいは胸部から針を刺します。穿刺後、硬膜外腔に柔らかく、非常に細いカテーテルを留置します。硬膜外麻酔は術後の鎮痛を主な目的としており、多くはカテーテルを挿入した後に全身麻酔や脊髄くも膜下麻酔を併せて行います。

B-2手術中の管理

 麻酔科医は、手術の刺激や患者さんの全身状態に応じて、手術を安全に進められるように患者さんの全身状態を維持します。麻酔中は絶えず全身状態を監視し、輸液や輸血、薬剤の投与、呼吸の管理、体温の調節などを行います。必要であれば、眠くなる薬を投与することもあります。

 脊髄くも膜下麻酔の効果は数時間持続しますが、時間の経過などで手術中に麻酔効果が弱まり、違和感や痛みなどを感じることがまれにあります。そのような場合には全身麻酔に変更するなどの対処を行います。 

B-3手術終了後

 手術が終了すると、意識状態、血圧や脈拍、呼吸などが安定していることを確認して、回復室に移ります。回復室で病室に帰る基準が満たされたことを医師が確認したら、病室に戻ります。脊髄くも膜下麻酔の効果は手術終了後も数時間持続します。その間、感覚や動きが鈍麻していますが、徐々に元通りに戻ってきます。

3)神経ブロック

 A.神経ブロックとは

 神経ブロックとは、痛みを伝える神経の周囲に麻酔薬を注入して、痛みを感じにくくさせる方法です。手術部位に直接麻酔薬を投与する局所麻酔より広い範囲に麻酔を効かせることができます。

B.神経ブロックの実際

 目標とする神経や針の位置を確認するために、超音波診断装置や神経刺激装置を用います。神経刺激装置を用いた時には、目標とする手や足が刺激に合わせて動いたり、ひびくような感覚を感じたりすることがあります。目標とする神経の周辺に針が達すると、麻酔薬を注入します。麻酔が効くと、対象部位に重い感覚、しびれが徐々に出てきて、感覚と動きが麻痺します。穿刺中に電気が走るような痛みを感じた時はすぐにお知らせ下さい。

 神経ブロック単独で手術を行う場合と、全身麻酔と併用する場合があります。

C.神経ブロックの種類

l 上肢、下肢の神経ブロック

 手や足の比較的太い神経に対するブロックで、部位により腕神経叢ブロック、腰神経叢ブロック、大腿神経ブロック、坐骨神経ブロックなどがあります。手術後も継続して麻酔薬を投与し、痛みを抑えられるように、カテーテルを留置することもあります。

l 体幹部の末梢神経ブロック

 胸や腹の筋肉の間に麻酔薬を注射するブロックで、部位により腹横筋膜面ブロック(TAPブロック)、腹直筋鞘ブロック、傍脊椎ブロック、肋間神経ブロックなどがあります。

D.手術中の管理

 麻酔科医は、手術の刺激や患者さんの全身状態に応じて、手術を安全に進められるように患者さんの全身状態を維持します。麻酔中は絶えず全身状態を監視し、輸液や輸血、薬剤の投与、呼吸の管理、体温の調節などを行います。

 時間の経過などで手術中に麻酔効果が弱まり、違和感や痛みなどを感じることがまれにあります。そのような場合には全身麻酔に変更するなど、しかるべき対処を行います。

 神経ブロックの効果は手術終了後も数時間から1日程度持続します。その間、感覚や動きが鈍麻していますが、徐々に元通りに戻ってきます。

6.麻酔の合併症

合併症は、麻酔を受ける全ての方に起こりうることです。術前診察や検査結果をふまえて、細心の注意をはらうことで、かなりの確率で予防することができます。しかし、医療行為である以上、100%の安全はあり得ません。合併症に際しては、常に最善の治療を行うよう心がけています。
 社団法人日本麻酔科学会では、学会認定の麻酔科専門医が勤務する病院を対象に、麻酔偶発症(手術室で起きた心停止、高度低血圧、高度低酸素血症、その他の危機、と定義)の実態調査と分析を毎年行なっています。2009〜2011年の3年間の約440万例をまとめた結果によると、手術中に起きた偶発症で30日以内に死亡する率は1万例に対して3.93例で、そのうち麻酔が原因で死亡する率は0.07例(100万例に7例)程度です。いずれも2004〜2008年の前回調査より率が低下しています。
 以下に、主な合併症を記載しますが、他にも予期しない合併症がおこることがあります。

1)すべての麻酔法に共通な合併症

 l  アレルギー

 まれに麻酔や手術に使用する薬へのアレルギー反応により、蕁麻疹が出たり、呼吸困難になったり、循環不全(ショック)になったりすることがあります。また、麻酔や手術で使用する医療材料によって(ゴム製品など)同じような反応が起こることがあります。アレルギーのある方は別の物質でもアレルギー反応を起こすことがあります。(例:果物とゴム製品)

以前に特定の薬でアレルギー反応を起こされたことがある方、特定の物質や食物にアレルギーのある方はお知らせください。

l  肺塞栓症

 血栓(血のかたまり)などが肺の血管につまると呼吸困難、胸痛、ときに心肺停止を引き起こすことがあります。これが肺塞栓症(エコノミークラス症候群)で、発生頻度は0.0080.04%程度ですが、一旦発症すると死亡率が1030%を超える危険な病気です。肺塞栓症の主な原因は、血流の停滞によって、足の静脈にできた血のかたまり(深部静脈血栓)が肺に流れてくることです。長期間寝たきりの状態、および一時的に動けない状態(手術中・後)はリスクが高く、手術後の深部静脈血栓の発生頻度は、10.831.3%と報告されています。このため、手術中から手術後に肺塞栓症を防止する様々な予防法が実施されています。

肺塞栓症が発生しやすい方

 高齢の方、肥満の方、妊娠している方、出産経験のある方、ピル(経口避妊薬)を内服している方、先天的または薬物などにより血液が固まりやすい方、心疾患、悪性腫瘍、脳卒中、下肢の浮腫・うっ血・潰瘍などの病歴のある方、喫煙者、長期間寝たきりの方

肺塞栓症が発生しやすい手術

 下腹部手術、多発骨折の手術、切石位や腹臥位で行う手術、長時間の手術

肺塞栓症の予防処置

 弾性ストッキングの着用、器械による下肢のマッサージ、術後の抗凝固療法(血を固まりにくくする薬の投与)

l 狭心症発作、心筋梗塞

 1.83.0%程度の発生率が報告されています。もともと、狭心症や心筋梗塞の病歴のある方はより危険性が高くなります。特に心筋梗塞を起こして3ヶ月以内の手術の場合、発生頻度は1735%前後と報告されています。

l 脳梗塞

0.080.38%の発生率が報告されています。不整脈や脳梗塞の病歴のある方では危険性が高くなります。

l 脳出血、くも膜下出血

脳出血、くも膜下出血の病歴のある方、高血圧の方は発生する危険性が高くなります。

l 肝・腎機能障害

 肝・腎機能が低下している方は、その機能がより悪くなる可能性があります。

l 術後の一過性の精神症状の出現

 高齢者ではせん妄(認知症のような症状)などの精神症状が一過性に出現することがあります。軽いものを含めると高齢者のうち50%にせん妄が生じるという報告があります。

l 悪心(吐き気)・嘔吐

 手術後に悪心・嘔吐が起こる場合があります。発生しやすい方は、若年の女性、非喫煙者、乗り物酔いを起こしやすい方、以前の麻酔で悪心・嘔吐があった方です。これらに該当する場合には、対策を行うことが可能ですので、お知らせください。

l 手足や体幹のしびれ

 手術中の体位などの関係で手術後に手足や体幹にしびれや感覚の鈍麻が起こることがあります。多くは数日で軽快しますが、時には治るまでに年単位の時間がかかったり、後遺症となったりすることもあります。

l 点滴によって生じる合併症

 点滴は麻酔を行う上で非常に重要な手技ですので、安全かつ確実な施行を心がけています。しかし、まれに血管外への漏れ、血管炎、血腫、感染、腱や靭帯の損傷、末梢神経障害、空気塞栓などが生じることがあります。

2)全身麻酔の合併症

 l 歯の損傷、抜歯

 気管挿管の操作や、麻酔覚醒時に歯が損傷、あるいは抜けることがあります。特にもともとぐらぐらしている歯や、差し歯はその可能性が高くなります。

l のどの痛みや声のかすれ

 気管チューブの影響で麻酔から覚めた後にのどの痛みを感じたり、かすれ声になったりする場合があります。時間とともによくなりますが、まれに回復に時間がかかることもあります。長期間続く場合には耳鼻咽喉科等の専門医の受診が必要となります。

l 誤嚥性肺炎

手術前後に予期せずに胃の内容物が気管内に入り、誤嚥性肺炎を起こすことがあります。これを起こりにくくするために、手術前の絶食・絶飲の指示を必ず守ってください。誤嚥性肺炎を起こしやすいのは、消化管に通過障害のある方や食後など胃に食べ物が溜まっている方、妊婦、腹部に大きな病変のある方、外傷患者などです。誤嚥性肺炎は重症化すると命に関わることもあります。

l 気道確保困難

 全身麻酔を行う際に気道を確保することが困難な方がいます。気道確保困難が予想される場合、特別な準備や対策が必要となります。気道確保困難が予想されるのは、関節リウマチの方、首の手術を受けた方、頭部や首に影響のある先天性疾患、首に大きな病変がある方、首を後ろにそらすことがしにくい方、口が開けにくい方、顎が小さい方、首が短い方、肥満の方、以前の麻酔時に気道確保が困難であった方などです。

 万全の準備を行ってから気道確保を試みたにもかかわらず、気道確保がうまくいかないことがあります。また、麻酔前には全く予想し得なかった気道確保困難がおこることもあります。このような場合は生命に危機が及ぶため、気管切開(のどに切れ目を入れて気管に直接チューブを入れる)などの外科的な気道確保を行う場合があります。

l 気管支痙攣、喉頭痙攣

 気管チューブの刺激や薬剤へのアレルギー反応などが原因で気管支痙攣や喉頭痙攣を起こすことがあります。喘息の既往がある方や感冒症状のある方は、起こる可能性が高くなります。気管支痙攣や喉頭痙攣による呼吸不全が長期間続くと、手術後に治療が必要となることや、時には命に関わることもあります。

l 悪性高熱症

 悪性高熱症とは、全身麻酔を受けると全身の筋肉が硬直し、高熱がでる病気で、死に至ることもあります。稀な合併症で、成人で710万人に1人程度の発生率です。先天的な体質に関連があり、関連する遺伝子を持っている方は2万人から6万人に1人程度との報告があります。

 血縁者の中でこのような反応を起こした方がいる場合や、持病に筋疾患(筋肉の病気)のある場合は、麻酔科医に必ずお知らせ下さい。しかし、血縁者の反応や素因となる遺伝子がなくても悪性高熱症が生じることもあります。

l その他の合併症

 手術中にそのような兆候がみられなくても、手術が終わった後に手術中の記憶が残っている場合があることが報告されています。このようなことは非常に稀ではありますが、起こり得る可能性が考えられます。

3)脊髄くも膜下麻酔・硬膜外麻酔・神経ブロックの合併症

 l 局所麻酔薬による合併症

 局所麻酔薬などの影響により血圧が低下したり、心拍に異常をきたしたり、息苦しさを感じたりします。また、吐き気や気が遠くなるなどの症状が出ることがあります。

l 硬膜穿刺後頭痛

 脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔の後に頭痛が起こることがあります。硬膜穿刺後頭痛は起き上がると頭痛が強くなり、横になると軽くなるという特徴があります。たいてい数日間の安静と輸液で改善しますが、まれに症状が持続し、入院期間が予定より延長することがあります。入院中だけでなく退院後にも遅れて発症することがありますので、症状があればすぐに診察を受けて下さい。

l 硬膜外血腫

 脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔の穿刺時に、背骨に囲まれた空間(脊柱管)内に血のかたまり(血腫)ができることがあります。ごくまれですが、足の痛みやしびれ、動きの障害などが起こることがあります。手術後だけでなく、病室に戻ってから症状が出る場合があり、時には緊急手術が必要となります。このような症状に気がついたら、すぐにお知らせください。血が固まりにくい方、血を固まりにくくする薬を使っている方は危険性が非常に高くなります。

l 感覚鈍麻、運動障害、異常感覚

 局所麻酔薬の作用による感覚鈍麻や運動障害、異常感覚が、薬の作用時間が過ぎたあとも持続することがあります。たいていは数日で消失しますが、まれに数ヶ月から数年単位で持続することがあります。原因は手技に伴う神経の損傷、局所麻酔薬による神経への影響などが考えられます。原因や障害の程度によって元に戻る時間は異なってきますが、治るまでに年単位の時間がかかったり、後遺症が残ったりすることがあります。

l 局所麻酔薬中毒

 局所麻酔薬中毒は、血中の局所麻酔薬の濃度が過度に上昇することで、めまいや耳鳴り、口周囲のしびれなどの症状がおこります。重症例では、意識消失、痙攣が生じたり、さらに濃度が上昇すると昏睡、呼吸停止、不整脈、心停止が生じたりすることがあります。

l カテーテル遺残

 局所麻酔薬を持続投与するためのカテーテル抜去の際に、非常にまれにカテーテルがちぎれて身体の中に残ってしまうことがあります。取り出すには手術が必要となる場合があります。

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