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無症候性未破裂脳動脈瘤

昭和大学脳神経外科は脳動脈瘤の治療に力を入れています

2012年4月より昭和大学脳神経外科 教授に着任した水谷は、約2000例を超える脳動脈瘤の豊富な手術経験を持っており、各種のメディアにも紹介されてきました。また、脳神経外科の各種学会やセミナーで若手脳外科医師への教育講演を多数行っています。若手脳神経外科医のバイブルとされる、脳神経外科速報の誌面に未破裂脳動脈瘤手術の手術戦略(2008年2月号)、無血の術野を目指す脳動脈瘤手術の基本PartI(2014年10月)PartII(2015年2月)というテーマで取り上げられました。
前任地の東京都立多摩総合医療センター在籍時より、週刊朝日の"手術数でわかる、いい病院"に2004年から2017年までほぼ連続で水谷のコメントが取り上げられています。
最近では、夕刊フジ(2017年4月)に無血の手術を行う脳動脈瘤手術の第一人者として紹介されました。また 2014年9月から昭和大学藤が丘病院脳神経外科に本邦の脳血管内治療の第一人者である寺田友昭教授を迎え、昭和大学脳神経外科教室全体で、開頭術、血管内治療の両方において国内トップクラスの治療を提供しています。

治療件数と成績

水谷が2003-2016年の14年間(2003-2012 3月東京都多摩総合医療センターから2012 4月-2016 12月昭和大学にかけて)に主導した連続 818件の無症候性(生活を制限するような障害を認めない)未破裂脳動脈瘤に対するクリッピング術において、手術によって援助を必要とするような障害を来した方(mRS 3-6)は10人(1.2%)で、残りの808人(98.8%)の方は通常生活や仕事が可能あるいは、元の生活に戻っています。また、死亡率は 0でした。
脳動脈瘤手術の生活制限をきたす標準的な障害率は5%とされていますので、これは施設として全国に誇ることのできる数字です。

脳動脈瘤が発見されたら… 治療するべきか?

まず脳神経外科医による正確なインフォームドコンセントを

脳動脈瘤は脳ドックや、頭痛、めまいなどの原因を調べるためにMRI、MRAを受けることによって、未破裂の状態で発見されます。

※MRIとは、磁気を利用した断層撮影で、殆どの病気の診断ができるすぐれた検査です。しかし、脳動脈瘤の存在はMRIでは、通常わかりません。脳動脈瘤は、血管だけをみるMRAという検査で発見されます。
成人人口の 4-5人/100人が、脳動脈瘤を持っていると言われており、MRAで2mm 以上の大きさの大多数の動脈瘤は発見されますが、多くは3mm未満の小さなものです。また、造影剤を使用した3D CTAという検査をすれば動脈瘤の詳細な形状がわかります。
脳動脈瘤が発見されてしまった場合、3mm未満のものでは破裂の心配はありませんが、3mm以上ものは破裂の可能性があり、破裂すれば、半数以上の方が寝たきりや死亡するくも膜下出血という重大な病気になります。このため、日々、旅行に行って大丈夫か? トイレに行くのが怖い、いつもドキドキして暮らしているという方が多くおられます。経過観察でよいのか、治療したほうがよいのか、治療する場合はどんな治療をするかについて脳動脈瘤を専門としている脳神経外科医から正確な説明 (インフォームドコンセント )を受けることが重要です。脳動脈瘤は、大きさ、形、分枝血管の位置など千差万別でバリエーションが多い疾患だからです。

脳動脈瘤とは

脳の動脈の分岐部にできた風船状の嚢状動脈瘤と、脳の血管自体が膨らんでできた本幹動脈瘤群があります。前者の動脈瘤は破裂するとくも膜下出血を生じますが、破裂しない限りは基本的に無症状です。後者の動脈瘤には破裂してくも膜下出血になるものや、脳梗塞になるもの、無症状で安全なもの、進行性に大きくなり脳を圧迫するものなど病態の異なるいくつかのタイプがあります。本幹動脈瘤の中で有名なものは解離性動脈瘤です。しかし、"動脈瘤"といえば、血管分岐部の嚢状動脈瘤の方をさす場合が殆どです。

脳動脈瘤を治療するかどうかは 「自然歴」と「治療の安全性」の両てんびん

脳ドックなどで脳動脈瘤が見つかった場合、治療をするかどうかの判断には「自然歴」が重要です。「自然歴」とは、「破裂の危険性はどのくらいあるのか」「増大や変形する可能性はどのくらいあるのか」という確率を指します。さらに、自然歴を予測したら次に考慮しなければならないのは治療の安全性とリスクです。脳動脈瘤が見つかっても、すべての方にとって治療することがベストな選択とは限りません。その脳動脈瘤は安全に治療できるか、治療の際に合併症が起きる確率はどれくらいか、個々に予測する必要があります。動脈瘤は大きさ、部位、形状のバリエーションが広く、それだけ治療の安全性も個々に異なりますし、治療を受けられる方の年齢、脳の状態、全身状態の要素も重要です。また術者の技量は安全性を左右する大きな要素です。
治療をするかどうかの判断は、この「自然歴」と「治療の安全性」を両てんびんにかけて常に比較しながら検討していきます。

自然歴(破裂率)

動脈瘤の大きさ、部位と破裂率の関係
無症候性未破裂動脈瘤の破裂率は、7000人規模で実施した日本人の調査 (UCAS Japan)が2012年に報告され、全体平均 0.95%/年という結果が出ています。動脈瘤が大きいほど、破裂しやすく、大きさと破裂率の関係は以下になります
3-4mmの動脈瘤 → 年間破裂率 0.14-0.90%
5-6mmの動脈瘤 → 年間破裂率 0.31-1.37%
7-9mm の動脈瘤 → 年間破裂率 0.97-3.19%
10-24mm の動脈瘤 → 年間破裂率 1.07-6.94%
25mm以上の動脈瘤 → 年間破裂率 10.61-126.97%
不正形であるほど破裂しやすく、ブレブ(動脈瘤からさらに小さいコブが出ている形状)があると1.63倍と報告されています。

また、動脈瘤の場所によって破裂率は異なり、前交通動脈瘤、内頚動脈—後交通動脈瘤は他部位より破裂率が高い部位です。

破裂のリスクを高めるもの
喫煙習慣、高血圧、過度の飲酒(1週間で150g以上のアルコール摂取)、家族歴、多発性などが破裂リスクを高める要因として、あげられています。

生涯破裂率は、年間破裂率に余命見込み年数をかけ合わせて、さらに大きさ、場所、その他の条件を勘案して算定します。例えば60才の女性で、平均的な動脈瘤が発見された時に、余命は約30年ありますから、生涯破裂率は約1%×30=約30%程度と計算します。これを高いととるか低いととるかは、個人の考え方にもよります。

脳動脈瘤の治療

「開頭手術」と「血管内治療」、治療方法の比較

もし「治療を行う」と決まった場合、次に検討されるのは「どんな治療がよいか」です。脳動脈瘤の治療には手術によって頭を開けて外側から脳動脈瘤を治療する「開頭手術」と、頭を開けずに血管内で治療を行う「血管内治療」の2つがあります。
ここで理解する必要があるのは、「どちらの治療のほうが絶対によい」という基準で考えることはできないことです。なぜなら、どちらの治療にも優れた点とそうでない点が存在するからです。

<各治療の特徴>
開頭手術
(脳動脈瘤治療の約6割を占める)
直接病変に触れるため、侵襲性(周辺の脳組織へ影響を及ぼす可能性)があるといえます。頭を切って手術するので入院期間も長くなります。ただし、再発が少なく「根治」という面では大変優れた治療です。どんな形の動脈瘤にも対応でき、術中に万が一出血が起きた場合でもリカバーしやすいという特徴があります。
血管内治療
(脳動脈瘤治療の約4割を占める)
頭を切らなくてよいため、低侵襲(病変以外のほかの脳組織への影響の心配がない)であることが利点です。ただし、10パーセント程度の再発(動脈瘤に詰めたコイルの隙間から血流が入り込み再び動脈瘤が発生する)と、動脈瘤の形によっては治療ができないというマイナス面があります。また、万が一手術中に出血が起こった場合、リカバーしにくいという特徴があります。

脳動脈瘤は、形、場所、大きさによってバリエーションが多い疾患です。ですから「どちらの治療法が絶対的によいか」という考え方はできないものの、「どちらの治療が適しているのか」を導き出すことは可能です。上記に加え、個々の方の自然歴や条件は異なりますので「自分に」適した方法を医師とよく相談することが重要です。

どんな脳動脈瘤の場合にどのような治療が適しているか

たとえば脳底動脈先端部の動脈瘤は頭の奥の深い所にでき、意識の中枢を栄養とする重要な穿通枝という非常に細い動脈が近くにあるので、手術のリスクも高い場所です。これに対して血管内治療は比較的安全である場合が多く、再発よりも「治療そのものが安全に行えるかどうか」を優先しなければならないため、血管内治療のほうが適している場合が多いです。一方、動脈瘤自身から枝のように血管が出ている場合、中にコイルを詰めてしまうと枝になった血管も閉塞してしまうことになるため、血管内治療は適しておらず、脳の表面に近い位置にできた動脈瘤は逆に血管内治療では遠い位置になるため、特に中大脳動脈瘤は開頭してクリッピング術をするほうが適しているといえます。

昭和大学病院脳神経外科の場合、治療の検討をする際には開頭手術と血管内治療のそれぞれのエキスパートクラスの専門医が一緒にカンファレンスを行います。ひとつの脳動脈瘤に対してそれぞれの治療専門医が平等に比較検討し、患者さんに説明できることは、非常に利点になると思います。ただし、もちろん、優先されるべきは患者さんの希望ですから、これらの医師の評価と患者さんの要望を合わせて慎重に治療方針を検討します。

脳動脈瘤の治療方法(1) 開頭術

手術は、開頭して脳動脈瘤をクリップする、つまり「挟む」のが具体的な方法です。基本的には、動脈瘤の根元「ネック」という部分を挟みます。ただし、動脈瘤のでき方によって、ただネックを挟んだだけでは血管も一緒に閉塞してしまうもの、1本だけでなくクリップを複数本使うものなどさまざまあるため、ひとつひとつの動脈瘤によって使用するクリップの選択や挟み方に技術と経験が必要です。クリップは動脈瘤を挟んだまま永久的に脳内に残ります。運動をしていて外れてしまうようなこともありません。
使用するクリップはチタンでできており、手術後にMRIも可能です。クリッピングの際に重要なことは、クリップ先端を確実に視認し、深く入れすぎないことです。深く入れすぎてしまうと、動脈の裏側にある穿通枝という重要な血管を巻き込んで一緒に閉塞することがあるからです。このためには常に先端が見える角度にクリップをコントロールできる微妙な動きが必要です。昭和大学脳神経外科では、この技術を“ブレーディング”と呼んで実践しています。クリップの挟む部分をブレードということからの由来です。またクリップの先端を視認するためには、当然ながら、奥までよく見えるように、術野に血液のない、無血の手術ができる技量がある術者のほうが安全性の高い手術をすることができます。無血の手術とブレーディングは脳動脈瘤手術の術者の中でもエキスパートクラスの技術です。良性脳腫瘍の手術も脳動脈瘤の手術と極意は同じで、無血で血管を傷つけない技術のある脳神経外科医は良性脳腫瘍の技量も高いといえます。
科長の水谷は手術難易度が高い、大型巨大動脈瘤、解離性動脈瘤、後頭蓋窩動脈瘤、傍前床突起部内頚動脈瘤のそれぞれに対して100例以上と本邦有数の経験を有しています。昭和大学脳神経外科では、このような難易度の高い動脈瘤の手術成績を上げるためには、血管内治療の技術を活かしたバルーン血管閉塞テスト、ハイブリッド手術室での術中血管撮影を積極的に活用しています。

脳動脈瘤の治療方法(2) 脳血管内治療

脳動脈瘤コイル塞栓術

カテーテルによる治療です。脚の付け根の血管からカテーテルというチューブを挿入し、脳の血管まで進めていきます。そして、コイルと呼ばれるプラチナ製のやわらかい糸状のものを動脈瘤へ詰めます。非常に繊細な治療ですので、局所麻酔でも治療は行えますが、主に全身麻酔にて行っています。昭和大学病院では、Philips社製の最新鋭および最上級のアンギオ装置にて治療を行っています。当脳神経外科では、奥村浩隆医師が中心となって施行していますが、再発率も低く、成績は良好です。

昭和大学 脳神経外科における コイル塞栓術の成績(2013-2016年)
症例数 125例
手術による合併症 2例 1.6% (脳梗塞)
再発による再塞栓 2例 1.6% (平均観察期間 14.6か月)

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