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無症候性未破裂脳動脈瘤

2012年4月より昭和大学脳神経外科 教授に着任した水谷は、約1800例を超える豊富な手術経験を持っており、脳神経外科の各種学会やセミナ-で若手脳外科医師への教育講演を多数行っています。また、脳神経外科速報という脳外科医向けの雑誌で2008年2月号に未破裂脳動脈瘤手術の手術戦略というテーマで取り上げられました。

前任地の東京都立多摩総合医療センター週刊朝日が編集した" 手術数でわかる、いい病院 "に2004 年から2013年までほぼ連続で取り上げられています。


 



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くも膜下出血を生じた破裂動脈瘤に対しても、状態がよく、搬送された方に対してはクリッピング術の対象となります。破裂動脈瘤はすでにくも膜下出血を生じて脳がダメージを受けている状態で、再破裂予防の目的でクリッピング術を施行するので、手術がうまく成功しても自宅に満足な状態で退院できない方もおられます。これに対して無症候性未破裂動脈瘤のクリッピング術は障害のない普通の方に行う手術であり、手術の技量が問われます。


無症候性未破裂脳動脈瘤の手術成績

手術成績は100%を目指していますが,残念ながら100%ではありません。
水谷が2003-2012年の10年間 ( 2003 - 2012 3月 東京都多摩総合医療センター、2012 4月 - 12月)に主導した連続 538件の無症候性未破裂脳動脈瘤(手術前 歩行障害がない程度の方) に対するクリッピング術において、手術によって (元々ある障害は除く)生活制限をきたす障害を来した方 (mRS 3 - 6 ) は4人 (0.7%)、のみで、残りの534人 (99.3%) の方は通常生活や仕事が可能あるいは、元の生活に戻っています。この534人の中には、全く症状がなく通常の生活、仕事が可能であった 510人(94.8 %) と何らかの症状があるが通常の生活、仕事は可能である方 (m RS  1:  22人, mRS  2 : 2人 ) 24人(4.5 %)が含まれていました。また、死亡された方は 0人でした。これは全国に誇れる数字です。

手術成績を示す、国際共通基準
modified Rankin Scale (m RS)
0 - 全く症状なし
1 - 何らかの症状はあるが障害はない: 通常の仕事や活動は全て行える
2 - 軽微な障害: これまでの活動の全てはできないが身のまわりのことは援助なしでできる
3 - 中等度の障害: 何らかの援助を要するが援助なしで歩行できる
4 - 中等度から重度の障害: 援助なしでは歩行できず,身のまわりのこともできない
5 - 重度の障害: ねたきり,失禁,全面的な介護
6 - 死亡

脳動脈瘤治療についての考え方

脳動脈瘤が脳ドックなどで発見されてしまった場合、破裂すればくも膜下出血になるので、日々、旅行に行って大丈夫か? トイレに行くのが怖い
いつもドキドキして暮らしている という方が多くおられます。50-60才台で発見されることが多いので、あとの余命まで20-30年間での破裂率が10%,20%,30% あるいはもっと、などと医師に言われた場合、そのまま動脈瘤を抱えて生きていくか、治療に踏み切るかを考えざるを得ないと思います。動脈瘤にもいろいろあり形状、大きさ、場所、血管が癒着しているかなどでいろいろな判断が異なります。 その時には、われわれ動脈瘤治療医は、外来でなるべく適切な判断やその根拠となる事柄を説明していきたいと思っています。以下に経過観察か治療するか判断になる大体の基準や治療法を解説いたします。

脳動脈瘤とは

脳の動脈の分岐部にできた風船状の嚢状動脈瘤と、脳の血管自体が膨らんでできた本幹動脈瘤群があります(図1)。前者の動脈瘤は破裂するとくも膜下出血を生じますが、破裂しない限りは基本的に無症状です。後者の動脈瘤には破裂してくも膜下出血になるものや、脳梗塞になるもの、無症状で安全なもの、進行性に大きくなり脳を圧迫するものなど病態の異なるいくつかのタイプがあります。本幹動脈瘤の中で有名なものは解離性動脈瘤です。"動脈瘤"といえば、血管分岐部の嚢状動脈瘤の方をさす場合が殆どであり、これについて解説いたします。

(図1)

発見される頻度

成人人口の 1-2人/100人が、脳動脈瘤を持っていると言われています。脳ドックまたは、病院を受診し、MRIと同時にできる MRAという脳の血管を調べる検査をすれば、2mm 以上の大きさの大多数の動脈瘤は発見されます。発見される平均サイズは、4-6 mm ぐらいです。また、造影剤を使用した3D CTAという検査をすれば動脈瘤の詳細な形状がわかります。
※ MRIとは、磁気を利用した断層撮影で、殆どの病気の診断ができるすぐれた検査です。しかし、脳動脈瘤の存在はMRIでは、通常わかりません。脳動脈瘤は、血管だけをみるMRAという検査で発見されます。体内でに手術等で磁性体金属を持つ方にはできません。
  • MRI MRI
  • MRA MRA (矢印は発見された動脈瘤)

くも膜下出血 との関係

脳動脈瘤が破裂するとくも膜下出血になります。逆に言うと、動脈瘤を持っていない人は、くも膜下出血になる心配は殆どありません。くも膜下出血は、人口10万人に対して年間約12人の割合で発症する重篤な病気です。いったん、くも膜下出血になると50-60%の人が、死亡や寝たきりになります。脳動脈瘤は、破裂しない限り大多数の例で症状がなく、破裂した瞬間に、激烈な頭痛を生じたり、急に昏睡状態になります。

破裂率

無症候性未破裂動脈瘤の破裂率に関する報告は、海外を中心としたものが殆どで、調査によって数字に幅があります。また、大きさ、形状、部位やその他の要因で差があります。現在7000人規模で実施している日本人の調査 (UCAS Japan)の中間報告でも、動脈瘤の場所によって破裂率は異なり、平均 0.96% /年, 5mm以上では1.65% /年という結果が出ています。生涯破裂率は、これに余命見込み年数をかけ合わせて、さらに大きさ、場所、その他の条件を勘案して算定します。例えば60才の女性で、平均的な動脈瘤が発見された時に、余命は約30年ありますから、生涯破裂率は 約1 % x 30 = 約30% 程度と計算します。

動脈瘤の部位、大きさと破裂率の関係


動脈瘤が大きいほど破裂率が高くなります。
3-4 mmの動脈瘤 → 年間破裂率0.16  - 0.82 %
5-6  mmの動脈瘤 → 年間破裂率 0.18 - 1.44 %
7 -9 mm の動脈瘤 → 年間破裂率 0.74 - 3.92 %
10 - 24mm  の動脈瘤 → 年間破裂率 1.53 - 10.5 %
25mm  以上の動脈瘤 → 年間破裂率   16.85 - 100 %

動脈瘤の形

ブレブ (bleb) という突出した部分を持つ動脈瘤は破裂率が高く、大きさの如何に関わらず危険だとされています。

 

動脈瘤の部位

統計的に、破裂率が高い場所があり、後交通動脈瘤, 脳底動脈先端部瘤, 前交通動脈瘤などです。

 その他の要因

喫煙習慣、高血圧、過度の飲酒(1週間で150g以上のアルコール摂取)、家族歴、多発性などがあげられています。特に、喫煙習慣、高血圧、過度の飲酒のそれぞれの相対危険率は1.9 , 2.8 , 4.7 とされています。
 

動脈瘤の治療方法

動脈瘤の破裂を予防するには、現在、2通りの方法があります。

  1. 開頭手術
  2. 血管内治療(カテーテルによるコイル塞栓術)

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