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脳血管内治療

    脳神経血管内治療とは、『カテーテル』という非常に細い管を目的の病変部まで安全に挿入して治療を行う手術のことです。1980年代後半にマイクロカテーテルという非常に細いチューブが開発され、その後にこの治療法が飛躍的に発展しました。アメリカでは1991年にGDCというコイルが開発され、脳動脈瘤という病気に対して頭を開けることなく治療が可能となりました。日本でも1997年に使用できるようになりました。それから、15年が経過し、黎明期は過ぎたといえます。現在は使用できる道具や薬物の開発も進み、以前は治療困難な病気に対しても有効な治療がより安全に行えるようになりました。この治療の道具の開発は日進月歩で進化している治療法であり、ますます安全で体にやさしく、治療可能な病気が増えてくると期待されている治療法です。

対象となる病気

1.脳動脈瘤(未破裂・破裂)

2.急性期脳梗塞

3.頸部頸動脈狭窄症

4.頭蓋内・頭蓋外血管狭窄

5.硬膜動静脈瘻

6.脳動静脈奇形

当院での特徴

    当院には日本脳神経血管内治療指導医1名と専門医3名の計4名が常勤で勤務しており、t-PA無効症例、内頚動脈、中大脳動脈閉塞などのt-PAの効果の出にくい超急性期脳虚血症例に対する血管内治療による再開通療法、急性期脳動脈破裂脳動脈瘤に対する塞栓術などに24時間、365日対応いたします。また、脳神経センターという科の性質上、神経内科医と協力しながら適切な治療を行います。
    当センターで対応する主な疾患は、脳血管障害(超急性期脳梗塞、破裂、未破裂脳動脈瘤、脳動静脈奇形、硬膜脳動静脈シャント、頚動脈狭窄症、頭蓋内動脈狭窄症、椎骨、鎖骨下動脈狭窄症、脊髄動静脈奇形、脊髄硬膜動静脈シャント)、脳腫瘍(血管の豊富なもの)、頭頚部血管奇形、血管腫などです。

1.脳動脈瘤(未破裂・破裂)

    脳動脈瘤とは脳の血管にできますが、非常にもろくなった壁の部分が膨れる病気です。破れるとくも膜下出血という病気になります。このため、再出血予防のために破裂脳動脈瘤の早い時期の治療が必要となります。また、未破裂脳動脈瘤はfig 1にあるような破裂率が日本脳神経外科学会より報告がされました。患者様の状態や年齢、動脈瘤の場所や大きさに合わせて治療時期を相談して破裂予防の手術を行います。治療法は開頭術によるクリッピング術と頭を開けずにできる脳動脈瘤コイル塞栓術があります。病変や患者様の体の状態を考慮し、どちらか有効性が高く、危険性の低い方で治療するのが重要と我々は考えています。当院は脳神経外科医と脳血管内治療医の両方が脳神経センターという1つの科に集約されているため、一人一人の患者さん合わせた治療法の選択を行っています。


Fig 1 脳動脈瘤の場所と大きさにおける年間の破裂率
  3 - 4mm 5 - 6mm 7 - 9mm 10 - 24 mm 25 mm - total
前交通動脈 0.82 1.44 3.86 5.5 29.13 1.72
中大脳動脈 0.16 0.18 0.74 2.71 16.86 0.44
内頚動脈 0.27 0 2.05 1.53 100 0.55
内頚動脈後交通動脈分岐部 0.35 0.83 3.92 5.73 80.04 1.8
脳底動脈 0.41 0.69 0.91 10.5 100 2.23
椎骨動脈 0 0 0 1.8 0 0.52
椎骨解離性動脈瘤 0 0 0 2.49 0 0.95

    血管内治療法(コイル塞栓術)は足の付け根から細い管を血管内から留置し、目的の脳動脈瘤に極小のマイクロカテーテルを留置します。非常に柔らかいプラチナ製のコイルを瘤内に充填していきます。このとき、安全に治療を行うために高性能な極小の風船を動脈瘤入り口においたり、高性能な極小のステントを留置したりすることもあります。図1のような動脈瘤に対してコイルをいれることで、図2のように瘤が造影されなくなります。レントゲンをとると図3のように写ります。頭を開ける治療法ではないため、低侵襲であり、手術時間も一般的には開頭術より短時間で施行できます。治療後に普段の生活に早く戻ることができ、将来性の高い治療法です。

                

    最近では、通常の方法で治療困難な症例もステントを併用し積極的に治療しています。特に、ネックの広い動脈瘤に対して、各種のステントを併用し脳動脈瘤の塞栓術を行っています。代表症例を示します。脳底動脈先端部の巨大脳動脈瘤です。ネックが広く、通常の方法ではコイル塞栓術ができないのでステントをY字型に置き、ステントでネックを支えコイルを瘤内に充填しています。初回塞栓3年後に軽度の再開通を認めたため、再塞栓を行っていますが、神経症状の悪化は認めていません(国内第一症例)。脳動脈瘤コイル塞栓術総数800件の内、ステント併用コイル塞栓術は現在までに約100例行っており、3例に軽度の脳梗塞が生じたのと、無症候性ステント内狭窄1例、無症候性ステント閉塞を1例に認めていますが、日常生活に支障をきたす神経脱落症状を呈した症例はありません。

      

     

     
 

2.急性期脳梗塞

    脳の主幹動脈が急に詰まることで起きる病気です。多くは心臓に問題があり、最も多い原因が心房細動と言われる不整脈です。血液をさらさらにする薬で予防することが普通ですが、それでも起きることがあります。こうした病気になった方は急に左右どちらかの手足に麻痺がでたり、左右どちらかに強いしびれがでたりします。また、うまくしゃべれなくなったり、意識障害のために呼名に反応しなくなったりします。こうした場合は早期の対処が必要となります。現在、血栓溶解剤(t-PA)のできるだけ早い全身投与で治療することが多いですが、治療効果が得られない場合も少なくありません。こうした場合、カテーテルで血栓除去を行うことで改善をはかることができます。カテーテルによる血栓除去の長所は、血栓溶解剤の量を低減でき、出血の危険性を減らすことができます。また、直接除去できるため大きい血栓に対しては、薬物の全身投与よりも効果的です。当院では4名の脳血管内治療医が24時間・365日の体制でこの治療にあったっています。また、当院にはSCUがあることから治療翌日より、リハビリ医やリハビリ療法士、薬剤師の治療への介入が行われ、最短での回復をめざしています。当院では、血栓除去術は主にMerci retrieval system(図4)かPenumbra system(図5)を使用して施行していましたが、最近ではステント型のSolitarire、Trevoという最新型の血栓除去デバイスを用いて良好な成績を上げています。


     

3.頸部頸動脈狭窄症

    頸部頸動脈狭窄症とは総頸動脈から内頸動脈にかけて動脈硬化により、血管内膜に余分なコレステロール付着することで粥腫(プラーク)というものができ、血管の内腔を狭くすることで脳梗塞のリスクを高くする病気のことです。通常生じる脳梗塞はアテローム塞栓性脳梗塞というもので、付着したプラークから血栓などが末梢に飛ぶために起こるものですが、狭窄の程度が強いと血行力学的に起こすこともあります。血力学的とは血液の粘稠度増加や血圧の急激な低下などでもともと血液が行きにくい場所にさらに血液が行かなくなったことで起こる脳梗塞です。脳梗塞が起きると手足が自由に動かないとかうまくしゃべれなくなったり、最悪は命にかかわることもあります。このため、予防治療が重要です。外科的な予防法には内頸動脈内膜剥離術と頸部頸動脈ステント留置術があります。頸部頸動脈ステント留置術は基本的には局所麻酔で太ももの付け根からカテーテルを挿入し、粥腫がついて狭くなっている病変部を風船で広げて、そこにステントという金属性の網状の筒を留置して血液の流れている空間を確保する治療法です。この方法は心筋梗塞・狭心症などで行われているステント治療と基本的には同じものです。最大の利点は局所麻酔下にできること、治療時間が短時間(通常2時間程度)であること、体に傷がつかない(太ももの付け根に3mm位の傷が付きますが)ことです。頸動脈ステント留置術は治療中に粥腫やそれに付着した血栓(カスみたいなもの)が血液中に遊離することがあり、治療中の脳梗塞の原因となります。このため、これを回収する必要があります。平成20年4月から本邦でも頸動脈ステント留置術が保険適応となりましたが、当時はまだ海外に比べ、使える道具が限られたものでした。ところが、現在は使用できる道具の種類も増えて、病変部に最適なカスの回収を行う道具を選択できるようになりました。このため、より安全にこの治療を受けていただくことができるようになりました。

    有効性については2004年に発表されたSAPPHIRE studyで1つでも内頸動脈内膜剥離術の危険因子のある患者さんで、無作為に剥離術とステント術に振り分けて術中・術後の経過をみた研究ですが、この試験で1か月以内の脳卒中・心筋梗塞・死亡の割合が9.8%, 4.8%であり、1年以内の脳卒中・心筋梗塞・死亡の割合も20.1%, 12.2%とどちらもステント術の方が低い結果でした。また、長期の再狭窄率もステント術が低い傾向にありました。最近では、末梢への塞栓を様々な方法で予防できるようになったので、仮性閉塞、血栓付き病変、完全閉塞等の難易度の高い頚動脈病変に対しても、積極的に頚動脈ステント留置術を施行いたします。

               

4.頭蓋内・頭蓋外血管狭窄

    頭頸部の頭蓋外血管狭窄は頸動脈以外にも鎖骨窩動脈や腕頭動脈に狭窄症・閉塞症を起こすことがあります。こうした大動脈弓部より直接分岐した血管に狭窄病変がおきると、腕の血圧に左右差(20mmHg以上)がでることになります。こうなると、病変のある側の腕の虚血症状が出現して、運動時にだるさや痛み、易疲労感を感じるようになります。更に鎖骨窩動脈からは椎骨動脈という脳幹を栄養する大事な動脈が分岐しています。腕への血流供給のために椎骨動脈が迂回路になることがあり、さらに脳幹部への血液供給が不足し、めまいや複視、霧視、失神発作が起こることがあります。(図6)このため、狭窄または閉塞の改善が必要となります。こうした部分での血管形成術に血管内治療は非常に有効な方法です。上腕動脈と大腿動脈から穿刺してカテーテルを挿入します。一方からガイドワイヤーという針金状のもので病変部を通過させて、ステントという金属の筒を留置します。この時に椎骨動脈等を介して脳に病変部からカスみたいなものが飛ばないようにすることが重要で、必要に応じてはカスを回収する道具を使用する場合もあります。

          



    頭蓋内血管狭窄は脳主幹動脈といわれる内頸動脈・中大脳動脈・脳底動脈・椎骨動脈などに動脈硬化の影響で血管内内腔に粥腫がたまり、脳梗塞の原因となる病気です。過去に脳梗塞や一過性脳虚血発作などの症状が見られた方には脳梗塞の再発が高いといわれています。治療法はまずは薬物療法が主体となります。血液をさらさらにする薬と動脈硬化を進める危険因子(高血圧、高脂血症、糖尿病など)に対する治療を先行して行うのが基本となります。しかし、内科治療では再発予防が不十分な場合もあり、年間約8~12%の脳梗塞発症率の報告もあります。薬物療法を行っても効果がない場合や効果が期待できない場合には外科的な治療を行います。外科的な治療法として2種類あり、開頭して行うバイパス術と脳血管内形成術があります。脳血管形成術は病変部を非常に小さい風船のついたカテーテルで拡げる方法です。単純な風船での拡張だけではうまくいかない場合もあり、この時はステントを併用することもあります。合併症は脳梗塞・脳出血などがあります。現時点では限られた患者さんのための治療であり、その適応は慎重に判断する必要があります。

                   

5.硬膜動静脈瘻

    血管は心臓から送られ、動脈・毛細血管・静脈と流れていきます。硬膜動静脈瘻は、何らかの原因で体の一部分で毛細血管を通らずに動脈から直接静脈に流れるような病態になり、動脈を流れる圧の高い血液が壁の薄い静脈に直接流れるために静脈が拡張・うっ滞して様々な症状をだします。この病気は年間に人口10万に対して0.3人程度の非常に少ない病気で、診断が困難な場合があります。病変部の場所によって症状は違いますが、日本人に最も多いのが海綿静脈洞という場所です。この場所にできると、白目の充血、眼球の突出、ものが二重に見えるなどの症状がみられます。最初に眼科にかかることが多いのですが、目の病気でないことがわかるとこの病気を強く疑うことになります。また、別の横静脈・S状静脈洞やテント静脈洞などにできるとうっ滞した静脈の影響で脳浮腫が起こるため、場所によっては視野の異常がでたり、運動機能障害がでたりします。また、継続する耳鳴りでみつかる場合もあります。脊髄にできる方もいますが、この場合は両下肢の運動障害や排尿や排便の障害が症状として現れます。診断はMRIにて比較的容易に診断できますが、血管撮影をしないと難しい場合もあります。

    治療法は血管内治療、開頭術、放射線治療、保存的経過観察があります。この病気では最も怖いのが脳の静脈に動脈血が流れていると脳出血を起こす危険性があることです。血管撮影を行って病態の把握を正確に行うことで最適な治療法を選択することになります。危険な病態でなければ保存的経過観察を行うこともありますが、後遺症出現の高い病変であれば積極的な治療を行います。病気の本態は動脈から静脈へ直接流入することですから、入り込む動脈側を止めるか流れ出す静脈側を止めることで直すことができます。血管内治療では病態と病変部の場所、血管の構築により、動脈側から止めるか静脈側から止めるかを選択して治療します。全身麻酔下に治療は行いますが、1回の治療の入院は1週間くらいです。治療は複数回行うこともありますが、多くは1回ですむことが多いです。

          

6.脳動静脈奇形

    脳動静脈奇形は先天的な病気です。血管が発生するときおのおのが役割を持って発達してくるのですが、毛細血管の部分が正常に分化できないと異常な血管網ができることがあります。これをナイダスと呼びます。動脈からこのナイダスを介して静脈に早い血流が流れていくのがこの病気の本態です。本来、毛細血管を介して細胞への酸素や栄養分の受け渡しを行うのですが、これをしないため圧の高い動脈から壁の薄い静脈に直接に近い形で血液が流れ込みます。このため、何かの影響で静脈側の壁が破綻すると脳内出血を起こすことになります。また、この部分は脳組織にはないものなのでこの場所を起点にてんかん発作を起こすこともあります。50%から60%は脳出血を起こし、30%から40%はてんかん発作を起こすと言われています。CTやMRI検査で診断できますが、治療法を選択するには脳血管撮影が必要となります。脳動静脈奇形は年間2%前後の出血率があり、出血した1年間だけは6%前後に上昇すると言われています。1回の出血による死亡率は10%前後あり、出血による重篤な後遺症を残す可能性も高いと言えます。働き盛りの30台前後の出血発症が多いため、治療のタイミングや治療法の選択をより慎重に選ぶべきと考えています。治療法には脳血管内治療、開頭術、放射線治療(ガンマナイフ、サイバーナイフ)があります。脳動静脈奇形の重傷度によっては単独の治療法で治せるものもありますが、各々の組み合わせで治療する場合もあります。脳血管内治療は脳動静脈奇形の異常血管網の近傍に非常に細いカテーテルを挿入して、液体塞栓物質を用いて行います。大きなナイダスを持った脳動静脈奇形や多数の流入動脈を持っているものに関して段階的にナイダスを小さくしたり、流入動脈の本数を減らしたりします。こうすることで、放射線治療の効果を高めたり、開頭摘出術の手助けをしたりします。最近では、小さなものは塞栓術で根治を目指し、大きなものはできるだけ塞栓してから手術、ガンマナイフで根治を目指します。非接着性液体塞栓物質ONYX導入後、治療の安全性、有効性がさらに向上しています。

【症例1】 32歳、女性、出産1ヶ月後に小脳出血で発症。小脳虫部に脳動静脈奇形を認めた。NBCA(n-butyl cyanoacrylate 接着性液体塞栓物質)を用いて超選択的に流入動脈から塞栓。脳動静脈奇形は完全に塞栓され、現在まで8年間の間再発を認めていない。
     

      

     


【症例2】 45歳男性。約10年前に某病院で脳動脈奇形の摘出手術を施行されたが、途中で不可能と判断され、流入動脈閉塞術で終わっている。10年後に脳内出血で発症し来院。各流入動脈から3回に分けてONYXを用いて塞栓術を行った。脳動静脈奇形は99%塞栓された。ごくわずかの残存部位に対しては、経過観察している。

      

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