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世界初、昭和大学医療チームが超音波で胎児の病気治療に成功

2012年5月23日

生まれる前の胎児の重い病気で、子宮内の胎児の心臓から、胎盤で繋がれた自分の体以外の別の組織に血液が送られることで心不全などを引き起こす「TRAP症候群」に対し、母親の腹の外から高出力の超音波(HIFU)を使って不要な血管を塞ぐ治療に、昭和大学産婦人科の医療チーム(岡井崇教授)が世界で初めて成功した。

インスピレーションと情熱がもたらした胎児治療のイノベーション



今回、昭和大学医療チームが治療に当たったのは、一卵性双生児の「TRAP症候群」。健康な胎児が、生まれつき心臓のない胎児に血液を送り出すというもので、心臓がない胎児は生存できず、健康な胎児も胎盤を通じて2人分の体に血液を送る状態となり、心臓がない胎児への血流を止めないと過重な負担のため6割程度は心不全で死亡するとされている。この病気は、日本で年間30例ほどしかなく、適切な診断や治療がなされていないケースも多い。

従来は母親に麻酔をし、お腹から治療用の針を刺して心臓のない胎児の血管に高周波のラジオ波を当てて血流を止める治療などが行われてきたが、子宮を傷つけるため、破水や早産の危険があった。
そこで昭和大学産婦人科の医療チーム(岡井崇教授)は、通常の超音波検査で使う100万倍のエネルギーの超音波を直径約1ミリの範囲に集中的に当て、高熱を発生させる装置を開発した。

超音波で血管を塞ぐ治療をしようと思いついた最初のきっかけは、子宮筋腫の治療だった。筋腫の組織を1ミリずつ焼いていく従来の治療法は相当な時間を要する。そこで、筋腫にある栄養血管を閉塞させれば、組織を一つずつ焼かずに死滅させることが可能ではと考えた。しかし、これは研究メンバーの異動などにより実現することはなかった。
ところが、岡井教授は「胎児にこそ、この治療法は有用である」と直感した。大人であれば血管を閉塞させる方法はいろいろあるが、胎児の場合には子宮に針を刺すなど、破水や早産のリスクも高い。胎児に対する超音波治療へと研究方向を変更した。装置の開発から、動物実験で血管の太さや血流の早さに応じたエネルギーの出力の調整、照射の間隔などの試行錯誤を繰り返し、HIFUの基礎研究をスタートさせてから10年の年月を積み重ね、今回の成功に至った。

この治療法は、従来の治療と違い子宮を傷つけずに済むため、痛みもなく、母親や胎児への負担が少ない。破水や早産のリスクもないため、母親にも胎児にも優しい治療になる。また今回の症例だけでなく、胎児の肺やお尻にできた腫瘍や尿路奇形など、胎児の他の先天性の病気にも応用が期待できる。

昭和大学 医学部 産婦人科学講座
教授 岡井 崇

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