こどもの脱腸(小児外科)

こどもの脱腸

脱腸(鼠径ヘルニア)は股上の鼠径部を介して腹部の臓器がはみ出てしまう現象です。

子供の脱腸は生まれる前に一時的にできる腹膜の出っ張り(鞘状突起)が残っていることによって発生します。

したがってこの突起を根元で縛る治療(高位結紮)が有効です。脱腸は成人でも見られますが、多くの場合おなかを支える壁が弱まっていることに因りますので、治療も腹壁を補強することが主体であり、小児とは病態が異なります。

はみ出る臓器は主に腸管、大網(おなかの中の膜状の脂肪)、卵巣・卵管などです。鞘状突起の根元が狭い場合にはおなかの中の水(腹水)だけが出て膨らみ、陰嚢水腫、Nuck管水腫などと呼ばれます。はみ出た腸が締め付けられてしまうことを嵌頓(かんとん)といい、通常痛みや嘔吐を伴います。
自然に戻る場合や医師により整復されれば後日の高位結紮で十分ですが、戻らないときは緊急手術の対象です。

当科では毎年170件程度の小児手術、そのうち50件程度の小児鼠径ヘルニア根治術を腹腔鏡下に行っています。手術ではラパヘルクロージャーという特殊な針糸を用いて高位結紮を行います。

1696573084363ラパヘルクロージャー


腹腔鏡の傷はおへその中に埋もれ、鉗子の創は5mmほどで整容性に優れており、再発率も0.3%以下と成績良好な手術です。
1696573523695術創はへそに隠れる弧状切開と側腹部、下腹部の極小切開(針孔程度)です。
図3下腹部の穴を専用の針糸を用いて閉じます(高位結紮)
乳児健診やかかりつけ医で鼠径ヘルニア、陰嚢水腫を疑われた際には当科までご相談ください。専門医が説明から治療まで一貫して丁寧に担当して参ります。      

                                                                    
(2023年10月掲載)