井上晴洋教授(消化器センター長)が米国外科内視鏡学会(SAGES)の最高賞を受賞!アジアで初の快挙!

お知らせ#受賞・表彰


井上晴洋教授(消化器センター長)が、内視鏡外科領域で世界をリードする米国内視鏡外科学会(SAGES: Society of American Gastrointestinal and Endoscopic Surgeons)の最高賞“SAGES George Berci Lifetime Achievement Award”を受賞しました。これまで十数名の受賞者のなか、アジアからは初めての受賞となります。
同学会は、低侵襲手術として知られる腹腔鏡下胆嚢摘出術の黎明期にあたる1990年に設立され、内視鏡外科領域では、世界的にもっとも権威のある学会といえます。
井上教授は、いまでは国際的にも標準治療となった食道アカラシアに対するPOEM(Per-oral endoscopic myotomy経口内視鏡的筋層切開術)の開発が高く評価され、同賞に選定されました。
受賞式は、3月15日から米国コロラド州で開催された同学会にて執り行われました。


【関連リンク】
名称:昭和大学江東豊洲病院消化器センター
URL:https://www.showa-u-kt-ddc.com/news/1742/
SAGES George Berci Lifetime Achievement award2022(加工版)消化器センター
井上晴洋センター長
【受賞コメント】
米国内視鏡外科学会最高賞を受賞して


世界初のPOEMは、2008年9月8日に昭和大学横浜市北部病院において施行されました。当時の昭和大学横浜市北部病院倫理委員会の承認のもと、無事に施行されました。術後経過も良好で8年後も順調に経過されております。最初の症例から現在に至るまで昭和大学横浜市北部病院と昭和大学江東豊洲病院におきまして合算して2,500例を超えるアカラシアの患者さまにPOEMを施行しており、97%以上の成功率を誇ります。従来の外科手術を内視鏡で施行するものであり、体表に傷のない低侵襲治療の代表となります。
POEMは発表当初から国際的反響があり、最初の症例から半年後には米国の主要大学のチームが昭和大学横浜市北部病院に見学に来るという現象が起こり、私自身も米国に招聘されるようになりました。ロサンゼルスのCedars-Sinai Medical Centerを皮切りに、Johns Hopkins大学、ニューヨークのWeill-Cornell Medical Center、Wintrop大学、さらにヒューストンのBaptist Medical Center, Washington manualで有名なセントルイスのワシントン大学、フィラデルフィア大学など、全米各地の病院に招聘されPOEMを中心とした内視鏡手術をおこなうようになりました。
2008年にはSAGESのPostgraduate courseとして全米初のPOEM training courseをcourse directorとしてカリフォルニア大学サンディエゴ校で主催させていただきました。
POEMは粘膜下層にトンネルを作成して、筋層切開を行うという方法であり、粘膜下内視鏡(Submucosal endoscopy)という新しい治療概念を確立しました。またPOEMの新たな展開として、粘膜下腫瘍の内視鏡的切除術(POET: Per-oral endoscopic tumor resection)、Zenker憩室に対する内視鏡的治療(Z-POEM)、胃麻痺性機能不全に対するG-POEM(Gastric POEM)、傍食道憩室症に対する筋層切開術(Diverticulum POEM)、POEM後の難治性逆流症に対するPOEF(Peroral endoscopic fundoplication)の開発へとつながりました。Gastroparesisは米国に多い疾患ですが、G-POEMの最初の症例は私自身がJohns Hopkins大学で施行することとなりました。
このようにPOEMは、着想から臨床の最初の症例、そして先進医療から保険収載まで、一貫して昭和大学でおこなわれたものであります。この受賞は20年間を超えて在籍させていただいている昭和大学の優れた医療システムがなければ達成できなかったものです。
ご許可いただいた倫理委員会のみなさま、ご協力いただいた内視鏡室、麻酔科、手術室、看護部、病院管理部門のみなさま、一貫して支えていただいた事務の関係者はじめ職員のみなさまのご協力、ご尽力にあらためまして心より感謝と御礼を申し上げます。

2022年4月14日 消化器センター長 教授 井上 晴洋