リハビリテーション室

当院のリハビリテーションセンターは、入院棟地下1階にリハビリテーション室、中央棟3階に心血管リハビリテーション室、中央棟4階に言語・聴覚療法室があります。リハビリテーションの対象疾患は様々で、当院では入院患者さんのうち約300~350名にリハビリテーションを行っています。
当院は三次救急病院であり、ICU(集中治療室)やER(救急救命センター)といった超急性期からも、本人の望む生活に戻れるよう、リスク管理を行いながら病態に応じて訓練を行っています。

スタッフ紹介

責任者:赤荻 賢司
理学療法士:15名(うち臨床理学療法学教員4名)
作業療法士: 9名(うち臨床作業療法学教員1名)
言語聴覚士: 4名

資格一覧

認定理学療法士 1名(呼吸・循環)
専門理学療法士 1名(運動器)
臨床実習指導者講習会受講 8名
東京DMAT 2名
日本DMAT 2名
がんのリハビリテーション研修終了 24名
3学会合同呼吸療法認定士 6名
呼吸ケア指導士 1名
心臓リハビリテーション指導士 2名
サルコペニア・フレイル指導士 1名
心不全療法指導士 2名
福祉住環境コーディネーター1級 1名
FCCSプロバイダー 1名
AHA-BLSプロバイダー 2名
障がい者スポーツ指導員 1名
2021年9月30日現在

診療統計

当院の新規リハビリテーション処方件数の推移

リハビリテーション処方件数は年々増加しており、様々な理由で入院されている患者さんに対して、個々に合わせたリハビリテーションを実施しています。
①

疾患別のリハビリテーション実施延べ人数(2020年度)

理学療法・作業療法・言語聴覚療法ともに、脳血管リハビリテーションや運動器リハビリテーションが全体の約半数を占めています。
理学療法では外来心臓リハビリテーションを実施しているため、心大血管リハビリテーションの実施も多くなっています。
作業療法では呼吸器疾患や心大血管疾患といった内部障害に対する作業療法の需要が高まってきており、実施件数も増えています。
また診療報酬改定において、言語聴覚療法も呼吸器リハビリテーションでの算定が可能となったため、誤嚥性肺炎等の患者さんに対する言語聴覚療法の実施件数も増えています。
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リハビリテーション処方日から初回介入までの日数

2019年度と比較し、リハビリテーション処方日から実際のリハビリテーション開始までの平均日数は短縮されています。またリハビリテーション処方日から2日以内のリハビリテーション開始率も92.8%から95.2%と向上するなど、より早期からリハビリテーションが行えるように取り組んでいます。
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業績

2020年度学会発表:9件

学会名演題名
PT第12回日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会Barbed sutureによる虚血が原因と思われる両側人工膝関節置換術(TKA)後に大腿四頭筋腱断裂を生じた2例
第47回日本肩関節学会RTSA後生じるScapular notchingによる術後成績への影響
第4回日本リハビリテーション医学会秋季学術会右大腿骨半置換術後、ADL自立し自宅退院となった多発性骨髄腫の1例
第4回日本リハビリテーション医学会秋季学術会長時間の弁膜症手術は有酸素運動主体の心臓リハビリテーション開始を延長させる独立した危険因子である
第26回日本心臓リハビリテーション学会学術集会経カテーテル大動脈弁置換術後患者の術前低栄養は術後の握力低下が顕著であり入院日数が長くなる傾向がある
OT第54回日本作業療法学会集中治療室入室患者における身体拘束とせん妄発生の関連
第54回日本作業療法学会集中治療室入室患者におけるせん妄発症に関する要因の検討
第4回日本リハビリテーション医学会秋季学術会コロナ禍におけるソーシャル・ネットワーキング・サービスを用いた退院支援の経験
第26回日本心臓リハビリテーション学会学術集会集中治療を要した心不全高齢者のフレイルの特徴:単一施設での症例対照研究
2020年度 学会座長・シンポジスト:1件

学会・研修会名
演題名
PT第47回日本肩関節学会一般口演12 人工関節(座長)
2020年度 論文投稿:3件

投稿先演題名
PT理学療法学 47巻3号 224-230リバース型人工肩関節置換術後の肩甲骨機能と術前因子の関連性
昭和学士会誌 第80巻 第2号 169-180造血幹細胞移植患者の運動機能の経時的変化
エキスパートナース Vol.36 No.8 87-89呼吸リハビリテーションはどのように行うの?
2020年度 学会運営・研修会開催など社会貢献活動:1件

活動内容
PT
日本理学療法士協会 肩関節機能障害理学療法ガイドライン 肩関節周囲炎 作成班

リハビリテーション疾患

当院で扱っているリハビリテーション疾患一覧

脳血管リハビリテーション

脳血管リハビリテーションとは、脳や神経系の疾患を発症した方に対し、基本的動作能力の回復等を通して日常生活の自立を図るために、種々の運動療法、実用歩行訓練、日常生活活動訓練、物理療法、応用的動作能力、社会的適応能力の回復等を目的として、個々に応じたプログラムを行うことをいいます。
主な対象患者
  • 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、その他の急性発症した脳血管疾患またはその手術後の方
  • 脳腫瘍、脳膿瘍、脊髄腫瘍、その他の急性発症した中枢神経疾患またはその手術後の方
特徴
発症後・手術後早期からリハビリテーションを提供しています。内容として、運動機能・基本的動作能力・応用歩行能力の回復等を目的とする理学療法、日常生活動作・生活関連動作の回復等を目的とする作業療法、言語聴覚能力・高次脳機能障害・摂食・嚥下機能の回復等を目的とする言語聴覚療法で構成されています。また、病棟看護師と連携し、病棟生活においてもリハビリテーションを実施することで、早期回復に努めています。

運動器リハビリテーション

運動器の疾患は仕事や日常生活の動作、スポーツ動作を困難にし、私たちの生活の質(QOL)を低下させる大きな一因となります。
運動器リハビリテーションとは運動器疾患を持つ人々に対して運動療法(ストレッチや筋力強化など)や物理療法、装具療法などを用い、身体機能を可能な限り改善することを目的とし、日常生活の質(QOL)の維持、向上を図ります。
主な対象疾患
  • 下記の様な疾患で手術を受ける方
  • 下記のような症状で入院治療が必要な方
変形性股関節症、大腿骨頭壊死症、臼蓋形成不全、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、頚椎症性脊髄症、後縦靭帯骨化症、変形性膝関節症、肩関節腱板断裂、高エネルギー損傷(開放骨折、多発骨折、複雑骨折など)、骨折(大腿骨頚部骨折、大腿骨転子部骨折、脊椎圧迫骨折、骨盤骨折など)
特徴
手術後翌日から全身状態に合わせて離床を促し、運動機能の改善・手術後合併症の予防・歩行能力や日常生活動作の獲得を目指してリハビリテーションを行います。受傷前の生活や疼痛のない動作の再獲得ができるよう、早期自宅退院・社会復帰に向けて支援していきます。

心大血管リハビリテーション

心臓リハビリテーションとは、心血管疾患患者さんの身体的・心理的・社会的・職業的状態を改善し、基礎にある動脈硬化や心不全の病態の進行を抑制あるいは軽減し、再発・再入院・死亡を減少させ、快適で活動的な生活を実現することをめざして、個々に合わせた「医学的評価・運動処方に基づく運動療法・冠危険因子是正・患者教育およびカウンセリング・最適薬物治療」を多職種チームが協調して実践する、長期にわたる多面的・包括的プログラムのことをいいます。
主な対象疾患
  • 急性発症した急性心筋梗塞、狭心症の方
  • 開心術後、経カテーテル大動脈弁置換術後、大血管疾患(大動脈解離、解離性大動脈瘤、大血管術後)の方
  • 慢性心不全、末梢動脈閉塞性疾患その他の慢性の心大血管の疾患により、一定程度以上の呼吸循環機能の低下及び日常生活能力の低下を来している方
特徴
循環器内科医や心臓血管外科医と適宜カンファレンスを行いながら、ベッドサイドでの動作練習から開始し、廊下歩行が問題なく可能となったら心臓リハビリテーション室でレジスタンストレーニング(抵抗運動)や自転車エルゴメーター(またはトレッドミル)を用いた運動療法を行っています。退院後も外来で心臓リハビリテーション室に通っていただき、運動療法だけでなく栄養指導や生活指導を行い、身体機能の向上や再発・再入院予防に努めています。

呼吸器リハビリテーション

呼吸器リハビリテーションは「病気や外傷によって生じた障害を持つ患者さんに対し、可能な限り機能を回復・維持させ、これにより患者さん自身が自立できることを継続的に支援していくための医療である」と定義されています。肺機能の障害で悩まれている患者さんのADL(日常生活活動)やQOL(生活の質)の維持・向上を目指しています。
主な対象患者
  • 急性発症した肺炎・無気肺の方
  • 肺腫瘍、胸部外傷、肺腫瘍、胸部外傷、肺塞栓の呼吸器疾患又はその手術後の方
  • 慢性の呼吸器疾患により、一定程度以上の重症の呼吸困難や日常生活能力の低下を来している方(COPD、気管支喘息、気管支拡張症、間質性肺炎、塵肺、びまん性汎気管支炎、神経筋疾患)で呼吸不全を伴う方、気管切開下の方、人工呼吸管理下の方、肺結核後遺症の方
  • 食道癌、胃癌、肝臓癌、咽・喉頭癌等の手術前後の呼吸機能訓練を要する方
特徴
集中治療室から集中治療医・看護師などと協働して早期離床を進め、人工呼吸器管理下の患者さんでも身体機能や認知機能の低下を予防し、集中治療室を退室するだけでなく社会復帰できるようリハビリテーションを実施しています。
全身状態の評価や運動耐容能の評価を行いながら、リハビリテーション(呼吸法の習得・呼吸筋ストレッチ体操の指導・日常生活動作の練習・運動トレーニング・排痰の練習・自己管理方法の習得)を行い、患者さんの生活やニーズなど個々に合わせたゴール設定や運動負荷量の設定を行います。
また、嚥下障害による誤嚥性肺炎の患者さんや嗄声などの発声障害のある患者さんに対して、言語聴覚士が嚥下訓練・発声訓練を行っています。

がんリハビリテーション

がんリハビリテーションとは、がんやがんの治療により生じた疼痛・筋力低下・障害等に対して、ADLやQOL低下予防・改善を目的として行われ、患者さんに最大限の身体的、社会的、心理的、職業的活動を実現させることを目指しています。
主な対象疾患
  • 入院中にがん治療のための手術、骨髄抑制を来しうる化学療法、放射線治療または造血幹細胞移植が行われる予定、または行われた方
  • 緩和ケアを目的とした治療を行っている進行がんまたは末期がんであり、症状増悪により入院している間に在宅復帰を目的としたリハビリテーションが必要な方
特徴
現在の医学では、がん治療の進歩により、がん患者さんの生存期間が長期化し、「がんと共存する時代」となっています。がんのリハビリテーションにおいては、がん種や治療方法、そして時期(治療前・中・後)により、その実施内容や目的が異なってくるという特徴があります。またがんの領域では、予防期や終末期におけるリハビリテーションも重要な役割を担っています。