女性骨盤底センター

診療科・センター紹介

女性骨盤底センター_嘉村康邦センター長
嘉村 康邦
女性のいわゆる“おしもの不具合”はなかなか相談しにくいものです。ほとんどの場合適切な診断・治療により症状の改善が得られますが、多くの女性が受診をためらってしまいます。このような悩みを抱えている女性は非常に多いのです。子宮や膀胱などが腟から脱出する骨盤臓器脱や尿漏れといった不具合は、放っておいても死に至るような病気ではありませんが、その女性の生活の質は著しく低下してしまいます。何か活動をしたいと思っても、おしもの不具合があるために引っ込み思案になり、行動制限をしてしまうことで、生活の質の低下につながるのです。そして究極的には、社会からの孤立感さえ抱いてしまうと言われています。したがって、たかが“おしもの不具合”ではなく、心豊かな人生を送る上での大きな障害であるわけです。
女性骨盤底センターは、まさしく“おしもの不具合”を専門に扱うセンターです。歴史的には泌尿器科や産婦人科のなかで、「女性泌尿器科」として発展してきた副専門分野です。女性の骨盤底は前方から膀胱・尿道、子宮・腟、そして直腸・肛門の3つに区分出来ます。おしもの不具合を抱える女性は多くの場合ひとつの区画だけの障害にとどまらず、多かれ少なかれ複数の区画の障害を認めます。そこで全区画を総合的に見渡せる診療科が必要となります。 当センターの最大の特徴は、女性泌尿器科領域を専門とする泌尿器科医および産婦人科医が同じセンター内で、共同で診断・治療に当たることです。直腸肛門の障害に対しては消化器外科へのコンサルトが可能です。さらに骨盤底筋トレーニングを専門的に指導可能な理学療法士を配し、手術療法のみならず、質の高い理学療法、行動療法などの保存的治療も行えます。

診療体制

外来は火曜日の午前・午後、木曜日午後、第2、4週金曜日午後行っており、予約制です。

診療方針

当センターの診療方針は、女性の泌尿・生殖器周りの器質的・機能的不具合を、主として手術療法により改善させ、“生活の質(QOL)の向上”を図ることです。対象とする疾患は骨盤臓器脱や尿失禁などの良性疾患で、これらは直接生命を脅かすものではありませんが、QOLを著しく損ねます。そこでまずは患者様の訴えを正確に把握し、女性泌尿器科疾患が発見されたならばその治療に全力を挙げて取り組みます。また、国内外の学会活動も積極的に行っており、最先端治療が可能となるよう努めています。

診療実績(2022年度)

  • 初診数・受診延数
  2019年 2020年 2021年 2022年
女性骨盤底センター外来 初診数  611名 340名 423名 488名
骨盤底リハビリ外来 受診延数 177名 195名 435名 531名


手術名 件数
経腟メッシュ手術 57件
腹腔鏡下仙骨腟固定術 37件
非メッシュ経腟骨盤臓器脱修復術 63件
尿失禁防止術(TVT・TOT) 26件
ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法
6件
膀胱水圧拡張術 7件
膀胱腟瘻・尿道腟瘻閉鎖術
15件
尿道憩室手術 9件
尿道脱手術
3件
その他 20件

主な対象疾患

骨盤臓器脱(膀胱瘤、子宮脱、直腸瘤、小腸瘤など)、尿失禁、過活動膀胱、低活動膀胱、間質性膀胱炎、腟瘻(膀胱腟瘻、尿道腟瘻、尿管腟瘻など)、尿道憩室、 尿失禁術後合併症(尿排出障害やメッシュ露出など)、反復性尿路感染症

スタッフ紹介

氏名 役職 専門 資格
嘉村 康邦
よしむら やすくに
センター長
特任教授
女性泌尿器科
排尿障害
日本泌尿器科学会:専門医・指導医
日本排尿機能学会:代議員・教育委員・認定医
日本女性骨盤底医学会:幹事・編集委員
日本骨盤臓器脱手術学会:副理事長
アジア太平洋女性泌尿器科学会(APUGA)役員
野村 由紀子
のむら ゆきこ
准教授 女性泌尿器科
産婦人科全般
腹腔鏡下手術
日本産科婦人科学会:専門医・指導医
日本産科婦人科内視鏡学会:評議員・腹腔鏡技術認定医
日本内視鏡外科学会:技術認定医
母体保護法指定医
岡田 義之
おかだ よしゆき
助教 女性泌尿器科
産婦人科全般
腹腔鏡下手術
日本産科婦人科学会:専門医・指導医
日本性感染症学会:認定医
日本産科婦人科内視鏡学会:腹腔鏡技術認定医
女性ヘルスケア専門医
日本内視鏡外科学会:技術認定医
産業医
中川 智絵
なかがわ ちえ
助教
女性泌尿器科
産婦人科全般
日本産科婦人科学会:専門医
新生児蘇生法(NCPR)専門コース修了
Fetal Medicine Foundationオペレータ資格
安田 想
やすだ そう
助教
泌尿器科全般

重田 美和
しげた みわ
理学療法士 リハビリテーション(理学療法) リハビリテーション療法学修士
排尿機能検査士
排泄機能指導士

外来担当医表

女性骨盤底センター

医療従事者の方へ

研究内容

  1. 女性骨盤底機能障害の解剖学的および機能的研究
  2. 骨盤臓器脱に対する新しい低侵襲手術の開発
  3. 分娩時肛門括約筋損傷(OASIS)の経時的変化に関する臨床的検討
  4. 泌尿生殖器瘻に対する新しい手術療法の開発
  5. 中部尿道スリング手術後のde Novo OABのリスクファクター
  6. 女性尿道憩室の病態と予防に関する臨床的検討
  7. 女性における尿禁制機構の解明と、新しい尿失禁手術の開発

医療連携・紹介制度について

骨盤臓器脱や尿失禁をはじめ過活動膀胱など、泌尿生殖器周りの疾患は非常にポピュラーなものですが、保存的治療が奏効しないときに専門医への紹介が必要になるかと思います。しかし本邦ではまだ女性泌尿器科領域の専門医が少ないのが現状ですので、紹介先に苦慮されることがあるかと存じます。当センターは女性泌尿器科のみをターゲットとし、必要であれば積極的に手術療法を行う施設ですので、どうぞ積極的にご利用下さるようお願いいたします。ご不明の点があれば何なりとお問い合わせください。どうぞよろしくお願いいたします。