リハビリテーション室

 当院のリハビリテーション室は、中央棟2階にあります。リハビリテーション医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が在籍し、総勢29名のスタッフが所属しております。
 主に入院されている患者様を対象として、ICU(集中治療室)やER(救急救命センター)といった急性期病棟からメンタルケアセンターや緩和ケアといった慢性期病棟まで対応し、対象者ご本人様の望む生活とは何かを多職種と情報共有し、リスク管理を行いながら病態に応じた訓練を提供しております。
 また、退院後継続したリハビリテーションが必要だと医師より判断された方には外来でのリハビリテーションも行っております。

スタッフ紹介

責任者:石原 剛
理学療法士:15名(うち臨床理学療法学教員3名)
作業療法士:10名(うち臨床作業療法学教員1名)
言語聴覚士:2名
事務員:1名

資格者一覧

認定理学療法士(運動器):1名
認定理学療法士(循環器):1名
認定理学療法士(呼吸):2名
認定理学療法士(臨床教育):1名
認定理学療法士(管理):1名
認定理学療法士(運営):1名
専門理学療法士(運動器):1名
登録理学療法士:6名
呼吸ケア指導士:2名
がんのリハビリテーション研修修了:20名
認知症ケア専門士:1名
臨床実習指導者講習会受講:16名
3学会合同呼吸療法認定士:6名
心臓リハビリテーション指導士:1名
AHA-BLSプロバイダー:1名
ICLSプロバイダー:2名
Semmes Weinstein monofilament test講習修了:3名
理学療法士協会指定管理者(初級):2名
理学療法士協会指定管理者(上級):2名
介護予防推進リーダー:1名
地域ケア会議推進リーダー:1名
フレイル対策推進マネジャー:1名
入谷式足底板上級コース:1名

2025年4月1日現在

診療統計

診療実績(2024年度)

年間総点数
理学療法
作業療法
言語聴覚療法
13,934,197
6,771,809
851,020
リハ室 年間総点数
疾患別延べ人数(2024年度)

 
脳血管
運動器
心大血管
呼吸器
がん廃用
 理学療法  5,349  11,982  3,780
8,530 4,4205,540
 作業療法  5,475 4,733 538
3,272 1,436
2,872
 言語聴覚療法  1,557 --- --- 747
157
380
疾患延べ人数PT

疾患延べ人数OT
疾患延べ人数ST
疾患別実施単位数(2024年度)
 
脳血管
運動器
心大血管
呼吸器
がん 廃用
 理学療法  6,697 14,632 4,815
10,330 4,992 6,391
 作業療法  8,028 5,535 658
3,811 1,631
3,480
 言語聴覚療法  2,025 --- --- 893
214
485

疾患別単位数PT
疾患別単位数OT
疾患別単位数ST

実績(2024年度)

①学会発表 
  学会名 演題名
PT
11件
第9回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会関東支部学術集会 肺がん手術後のリハビリテーション進行状況と阻害要因の検討
第30回日本心臓リハビリテーション学会学術集会 当院におけるStanford A型大動脈解離緊急手術後のリハビリテーションの現状
第43回関東甲信越ブロック理学療法士学会 リハビリテーション室での危険予知・急変時対応訓練の実践報告:ARCSモデルを活用した研修設計と実践
第9回日本心臓リハビリテーション学会甲信越支部地方会
心臓血管外科手術後の早期離床におけるHb値の関連性
第8回日本循環器理学療法学会学術大会 心臓血管外科手術後の術後1日目の離床を阻害した要因:離床開始基準におけるヘモグロビン値の調査
第7回日本理学療法管理学会学術大会
当院での循環器領域における職場内研修プログラムの実践報告:自己学習を促進するスタッフ育成の取り組み
第15回北部医学会総会
心臓血管外科手術後の術後1日目の離床を阻害した要因:離床開始基準におけるヘモグロビン値の調査
第41回神奈川県理学療法士学会
脳梗塞症例に対する歩行変化の検討~左立脚終期に着目して~
第41回神奈川県理学療法士学会
肺切除後に多発合併症を経験した高齢患者の症例 多発合併症の早期発見と対応による自宅退院の実現
第41回神奈川県理学療法士学会
肺がん手術後のリハビリテーションの効果と阻害要因:早期離床と理学療法の進行に影響を及ぼす要因の検討
第17回日本医療教授システム学会総会・学術集会
循環器領域におけるスタッフ育成の取り組み:ARCSモデルを活用した職場内研修プログラムの実践報告
 
 ②論文投稿及び分担執筆等 
  投稿先 演題名
PT
3件
循環器理学療法学 心臓血管外科手術後の術後1日目の離床を阻害した要因‐当院の実績とガイドラインの基準に基づく阻害要因の調査‐
実践クリティカルケアリハビリテーション 第4章:ICUにおけるリハビリテーションの実践,3心臓血管外科術後リハビリテーション
理学療法‐技術と研究-当院におけるStanford A型大動脈解離の理学療法:残存乖離の存在と手術後の合併症の検討
③講演・座長・シンポジスト 
  学会・研修会名 演題名
PT
1件 
第41回神奈川県理学療法士学会 7病院合同による転倒予防対策の取り組みと効果
④地域貢献
  活動内容
PT
2件
第1回都筑区心疾患医療介護連携事業市民向け講演会「心不全とは?予防のためにできること」
第24回都筑区リハビリテーション連絡会勉強会「心臓リハビリテーション:横浜市北部病院の実際-在宅生活を見据えて-

リハビリテーション紹介

〇 理学療法とは
 理学療法とは、「身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えること」と定義されております。具体的には、関節可動域の拡大、筋力強化、麻痺の回復、痛みの軽減など身体の運動機能に直接介入する治療から、基本動作練習、歩行練習など動作能力の向上を目指す治療まで、一人一人の身体能力や社会環境にあわせた治療プログラムを行い、日常生活の自立を目指します。
 理学療法士(Physical Therapist:PT)は、これらの理学療法を用いて、自立した自分らしい生活が送れるように支援する医学的リハビリテーションの専門職です。
 
〇 作業療法とは
 作業療法とは、身体・心理・社会・職業などの諸活動に障害のある方、または予測される方が、充実した生活を送ることができるように、心身の活動を高めるような様々な治療・練習・援助を行うことです。対象は、当院では主に、脳血管疾患、脊髄疾患、整形外科疾患、変性疾患、神経筋疾患、先天性疾患等による身体機能、認知精神機能、発達機能、日常生活活動、社会生活活動に障害をお持ちの方を対象としています。
・身体機能へのアプローチ:主に上肢機能の改善のために、筋力訓練、関節可動域訓練、スムーズな物品操作の練習(物のつかみ離し、物の持ち運び)、手指の細かい動作の練習(箸・書字、積み木や紐結びなど)を行います。
高次脳機能へのアプローチ:注意・記憶・意欲・思考・判断当の障害を評価して治療を行います。
・日常生活活動へのアプローチ:更衣・食事・排泄・整容等の身辺動作の再獲得を目指した訓練・指導を行います。必要に応じて、自助具の紹介を行います。
・発達機能へのアプローチ:身体・精神機能の評価を行い、必要に応じて本人および家族に訓練や指導を行います。
・精神機能へのアプローチ:当院では、精神機能のアプローチとして精神科作業療法を行っています。精神科作業療法は主に対象者同士が集まった集団を利用します。集団を利用することで、社会参加に向けた訓練だけでなく、他者交流を行うことで孤独による不安の軽減などの精神面改善の効果が認められています。
   
〇 言語聴覚療法とは
 言語聴覚士は「ことばによるコミュニケーション」と「食べる」ことについての専門職です。言葉を理解すること、話すこと、文字の読み書きのほか、記憶力や注意機能の低下といった障害に対してのアプローチを行います。
 また、飲み込み(嚥下)の力が低下してしまった方に対して、医師・歯科医師の指示のもとに、安全に食べ物を飲み込むことができるように訓練を行います。
 機能訓練だけでなく、機能維持、そして患者さんやご家族の心理的なサポートも合わせて行うことで、患者さんに寄り添っていきます。

リハビリテーション対象疾患

〇 脳血管リハビリテーション
 脳血管リハビリテーションは、脳や神経系の疾患を発症した方に対し、基本的動作能力の回復等を通して日常生活の自立を図るために、種々の運動療法、実用歩行訓練、日常生活活動訓練、物理療法、応用的動作能力、社会的適応能力の回復等を目的として、個々に応じたプログラムを行います。
主な対象患者
・脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、その他の急性発症した脳血管疾患またはその手術後の方
・脳腫瘍、脳膿瘍、脊髄腫瘍、その他の急性発症した中枢神経疾患またはその手術後の方
特徴
発症後・手術後早期からリハビリテーションを提供しています。内容として、運動機能・基本的動作能力・応用歩行能力の回復等を目的とする理学療法、日常生活動作・生活関連動作の回復等を目的とする作業療法、言語聴覚能力・高次脳機能障害・摂食・嚥下機能の回復等を目的とする言語聴覚療法で構成されています。また、病棟看護師と連携し、病棟生活においてもリハビリテーションを実施することで、早期回復に努めています。
 
〇 運動器リハビリテーション
 運動器の疾患は仕事や日常生活の動作、スポーツ動作を困難にし、私たちの生活の質(QOL)を低下させる大きな一因となります。
 運動器リハビリテーションは運動器疾患を持つ人々に対して運動療法(ストレッチや筋力強化など)や物理療法、装具療法などを用い、身体機能を可能な限り改善することを目的とし、日常生活の質(QOL)の維持、向上を図ります。
主な対象疾患
・下記の様な疾患で手術を受ける方
・下記のような症状で入院治療が必要な方
変形性股関節症、大腿骨頭壊死症、臼蓋形成不全、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、
椎間板ヘルニア、頚椎症性脊髄症、後縦靭帯骨化症、変形性膝関節症、肩関節腱板断裂、
高エネルギー損傷(開放骨折、多発骨折、複雑骨折など)、
骨折(大腿骨頚部骨折、大腿骨転子部骨折、脊椎圧迫骨折、骨盤骨折など)
特徴
手術後翌日から全身状態に合わせて離床を促し、運動機能の改善・手術後合併症の予防・歩行能力や日常生活動作の獲得を目指してリハビリテーションを行います。受傷前の生活や疼痛のない動作の再獲得ができるよう、早期自宅退院・社会復帰に向けて支援していきます。
 
〇 呼吸器リハビリテーション
 呼吸器リハビリテーションは「病気や外傷によって生じた障害を持つ患者さんに対し、可能な限り機能を回復・維持させ、これにより患者さん自身が自立できることを継続的に支援していくための医療である」と定義されています。肺機能の障害で悩まれている患者さんのADL(日常生活活動)やQOL(生活の質)の維持・向上を目指しています。
主な対象患者
・急性発症した肺炎・無気肺の方
・肺腫瘍、胸部外傷、肺腫瘍、胸部外傷、肺塞栓の呼吸器疾患又はその手術後の方
・慢性の呼吸器疾患により、一定程度以上の重症の呼吸困難や日常生活能力の低下を来している方(COPD、気管支喘息、気管支拡張症、間質性肺炎、塵肺、びまん性汎気管支炎、神経筋疾患)で呼吸不全を伴う方、気管切開下の方、人工呼吸管理下の方、肺結核後遺症の方
・食道癌、胃癌、肝臓癌、咽・喉頭癌等の手術前後の呼吸機能訓練を要する方
特徴
集中治療室から集中治療医・看護師などと協働して早期離床を進め、人工呼吸器管理下の患者さんでも身体機能や認知機能の低下を予防し、集中治療室を退室するだけでなく社会復帰できるようリハビリテーションを実施しています。
全身状態の評価や運動耐容能の評価を行いながら、リハビリテーション(呼吸法の習得・呼吸筋ストレッチ体操の指導・日常生活動作の練習・運動トレーニング・排痰の練習・自己管理方法の習得)を行い、患者さんの生活やニーズなど個々に合わせたゴール設定や運動負荷量の設定を行います。また、嚥下障害による誤嚥性肺炎の患者さんや嗄声などの発声障害のある患者さんに対して、言語聴覚士が嚥下訓練・発声訓練を行っています。
 
〇 がんリハビリテーション
 がんリハビリテーションとは、がんやがんの治療により生じた疼痛・筋力低下・障害等に対して、ADLやQOL低下予防・改善を目的として行われ、患者さんに最大限の身体的、社会的、心理的、職業的活動を実現させることを目指しています。
主な対象疾患
・入院中にがん治療のための手術、骨髄抑制を来しうる化学療法、放射線治療または造血幹細胞移植が行われる予定、または行われた方
・緩和ケアを目的とした治療を行っている進行がんまたは末期がんであり、症状増悪により入院している間に在宅復帰を目的としたリハビリテーションが必要な方
特徴
現在の医学では、がん治療の進歩により、がん患者さんの生存期間が長期化し、「がんと共存する時代」となっています。がんのリハビリテーションにおいては、がん種や治療方法、そして時期(治療前・中・後)により、その実施内容や目的が異なってくるという特徴があります。また、がんの領域では、予防期や終末期におけるリハビリテーションも重要な役割を担っています。

〇 心大血管リハビリテーション
 心臓リハビリテーションとは、心血管疾患患者さんの身体的・心理的・社会的・職業的状態を改善し、基礎にある動脈硬化や心不全の病態の進行を抑制あるいは軽減し、再発・再入院・死亡を減少させ、快適で活動的な生活を実現することをめざして、個々に合わせた「医学的評価・運動処方に基づく運動療法・冠危険因子是正・患者教育およびカウンセリング・最適薬物治療」を多職種チームが協調して実践する、長期にわたる多面的・包括的プログラムのことをいいます。
主な対象疾患
・急性発症した急性心筋梗塞、狭心症の方
・開心術後、経カテーテル大動脈弁置換術後、大血管疾患(大動脈解離、解離性大動脈瘤、大血管術後)の方
・慢性心不全、末梢動脈閉塞性疾患その他の慢性の心大血管の疾患により、一定程度以上の呼吸循環機能の低下及び日常生活能力の低下を来している方
特徴
循環器内科医や心臓血管外科医、リハビリテーション科医と適宜カンファレンスを行いながら、ベッドサイドでの動作練習から開始し、筋力強化等の運動療法、廊下歩行、階段昇降等、退院に向けて、身体機能の向上や再発・再入院予防に努めています。
肺がん手術後のリハビリテーションの効果と阻害要因:早期離床と理学療法の進行に影響を及ぼす要因の検討