医学研究科概要

研究科長あいさつ

医学研究科長大学院 医学研究科長 泉﨑雅彦

昭和大学大学院医学研究科は、生理系、病理系、社会医学系、内科系、外科系の5つの専門課程を擁し、それぞれの課程に複数の専攻分野を設置しています。国内外で活躍する先端的・独創的な生命科学・医学研究者をめざす人、高度な専門知識と技術を持った臨床医をめざす人、病院、公的機関、企業等に在籍しながら研究を行い、博士号取得をめざす人、医学部以外出身者で出身学部の特性を生かした医学研究者をめざす人に広く門戸を開いています。

指導教員は、講義、演習、実習、学会発表や学位論文の作成等に対する指導を通して、大学院生が医学分野に関する深い洞察力および専門的知識を習得できるよう積極的に支援し、課題探求能力を備えた研究者ならびに高度な知識と技術を有する専門職業人の養成のための教育を行います。また専攻分野に関わらず、大学院生は、「生体の組織構造解析法」、「生体の病理病態学的解析法」、「生体の機能解析法」、「生体内の物質分析法」、「分子生命科学的解析法」、「医学生物における統計学的解析法」という6つの共通科目を履修し、医学研究の遂行に共通して必要とされる基本的な知識や技能を修得します。

昭和大学大学院の特色として、医学研究科、歯学研究科、薬学研究科、保健医療学研究科の4研究科が連携しあえる環境があり、医学研究科の大学院生であっても、他の研究科の指導教員から指導を受けることもできます。さらに昭和大学には、「先端がん治療研究所」、「臨床薬理研究所」、「発達障害医療研究所」、「スポーツ運動科学研究所」があり、最先端の研究を実践するための経験豊富な指導教員と充実した設備群を備えています。また、医療人として働きながら履修することができるカリキュラムを用意しています。たとえば、医学部を卒業して臨床研修医として病院に勤務する社会人大学院生では、その期間は夜間と週末に開講される共通科目の履修を中心とした学習を進めることも可能で、研修と大学院の両立を実現することができます。また、専攻医として専門研修を行う場合にも対応できるよう、大学院のカリキュラムの工夫を行っています。さらには、本医学研究科の指導教員は、これまでに多くの社会人大学院生の指導経験があり、働きながら大学院で学ぶことの大変さを十分に理解しています。大学院生の背景も鑑み、個々のキャリア形成にベストな方法で、充実した大学院生活が送れるよう支援しています。

皆さまが昭和大学大学院医学研究科で研鑽を積み、医療、医学研究の担い手として、大いに活躍して頂きたいと思っています。近い将来、多くの皆さまにお会いできることを心待ちにしております。

研究テーマ

インスリン分泌残存2型糖尿病患者におけるリラグルチドと持効型インスリン併用療法と強化インスリン療法継続群にて血糖コントロール、体重、治療満足度についての前向き比較検討試験

婦人科腫瘍患者血漿中cell-free DNAにおけるMPS法でのコピー数変化の検出

新生ラットにおける胸髄吸息性活動の吻尾勾配形成に抑制性胸髄介在ニューロンは関与しない

ラモトリギンによる薬剤性過敏症症候群/好酸球増多と全身症状を伴う薬物反応と他の薬物によるものとの相違

日本人女性から検出されるHPV52/58の全ゲノム解析

顆粒細胞腫における液胞型ATPアーゼ複合体の高頻度変異の同定

3次元スペックルトラッキングによる左房機能と大きさは心血管イベントの重要な予後予測因子になる

遺伝子組換えトロンボモジュリンのラット抗GBM抗体腎炎治療効果と機序の検討


在学生・教員メッセージ

関水 壮哉さん 医学研究科
骨軟部腫瘍の研究を通じ、がん治療全体に寄与したい。

関水 壮哉さん 医学研究科 4 年次 整形外科学

私は「骨軟部腫瘍のゲノム解析」をテーマに基礎研究を行いました。骨軟部腫瘍は、骨や皮膚などの軟部組織にできる良性と悪性を含めた腫瘍の総称です。頻度が低いため、肺がんなどと比較すると遺伝子レベルの研究が進んでおらず、骨軟部腫瘍の研究を通じがん治療全体に活かせる知見が得られるのではと思いテーマとしました。様々な軟部腫瘍の検体を集め、網羅的な遺伝子解析を行いました。その結果、顆粒細胞腫に、これまでどのがん種でも報告がされていない、特徴的な遺伝子に変異があることを同定することができました。
研究生活の魅力は、臨床で使っている知識の根底を学べること、また、臨床で感じる疑問を解決するすべを身につけられることだと思います。また、多方面から医学をとらえることで探究心を育てることができることです。例え具体的なテーマが決まっていなくても自分の好奇心、探究心を大切にし研究の世界に飛び込んでみるのもいいかもしれません。

赤須 里沙子さん 医学研究科
現場への応用は、基礎の研究があってこそだと感じます。

赤須 里沙子さん 医学研究科 2 年次 生化学

学部卒業後、附属病院で研修医になると同時に大学院へ。1 、2年次は勤務しながらのため科目の受講が主でしたが、職場の理解もあり、平日夜の授業などは勤務時間を調整していただきました。3年次の研究では、ラットの肥満モデルを使い、悪玉コレステロールによって増加する蛋白と耐糖能異常の関係を調べていきます。ダイエットなど代謝に関心を持っていたことと、臨床現場で糖尿病の患者さんと関わるなかで、血糖管理の困難さを目の当たりにし、健康な状態からできる予防を探りたいと思ったためです。テーマの確定までには、その研究から本当に新たな知見が得られるかなど先行論文から調べる必要がありますが、先生方からのサポートのおかげで事前に調べることができました。
将来は海外で研究をしたいと思っています。多くの人は医師免許取得後、早い段階で専攻医資格取得を考えるかもしれませんが、医学は基礎研究があってこそ現場で応用できるものであるため、興味のある分野を追求することも非常に意義があると思います。

産婦人科学 関沢 明彦教授


先進的な胎児診断・治療で国内外の周産期医療をリード。
基礎研究の経験こそが臨床医としての診療の奥深さを生む。


産婦人科学 関沢 明彦教授

当科では母体血中DNA/RNAを使った胎児診断や合併症予測などの研究に取り組み、これまで多くの成果をあげてきました。また、胎児超音波診断の分野においては国内で最もアクティブに研究成果を論文報告しています。治療分野でも超音波を用いた胎児治療を世界で初めて成功させています。また、幹細胞の胎児移植による先天性疾患治療の研究など、胎児診断・治療の分野で国内外をけん引する存在です。現在の大学院生は7人で、胎児診断・治療、妊娠合併症の発症予知、子宮頸がんのHPVウイルスの研究、ゲノム編集を用いた先天性疾患治療、子宮内フローラの研究など幅広い分野の研究に取り組んでおり、基礎的研究の一部は、国立がん研究センターや国立感染症研究所、国立成育医療研究センターなどに国内留学して行っています。臨床での疑問を臨床研究や基礎研究で一つずつ解決していくことが、産婦人科医療の進歩への貢献につながると考えています。また、このようなプロセスを学び、経験することが医師としての成長にも不可欠であると思っています。

研究科の特徴・理念

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医学研究科アドミッション・ポリシー(入学者の受入方針)

  1. 国内外で活躍する先端的・独創的な生命科学・医学研究者を目指す人
  2. 高度な専門知識と技術を持った臨床医を目指す人
  3. 病院、公的機関、企業等に在籍しながら研究を行い、博士号取得を目指す人
  4. 医学部以外出身者で出身学部の特性を生かした医学研究者を目指す人
医学研究科カリキュラム・ポリシー(教育課程の編成方針)

  1. 生命科学の基盤の上に、医学分野に関する深い洞察力及び専門的知識の習得に加えて、強い責任感と高い倫理観をもち、課題探求能力と教育・研究指導能力を備えた研究者並びに高度な知識と技術を有する専門職業人養成のための教育を行う。
  2. 大学院生は医学研究科医学専攻内のいずれかの研究分野に属して研究を行う。
  3. 医学研究科の教育は、講義、演習、実習および学位論文の作成等に対する指導により行う。
  4. 医学研究を実施していく上での基本的な知識と技術を身につけるために、7つの共通科目(必修)を開講する。
  5. 共通科目は医学部以外の学部出身者が基本的な知識と技術を身につけるためのものでもあり、本学他研究科の大学院生も受講することが出来る。
  6. 本学他研究科の共通科目を受講することができ、単位として認める。
  7. 医学研究科教授会が認めた国内外の大学、研究所等で研究を行うことが可能であり、単位として認める。
  8. 単位認定されている学内研究会・セミナーに出席した場合は、関連共通科目の履修時間として認める。
  9. 幅広い視野を確立し成果を発信する能力を養うために国内外の学会・研究会等に参加できる。
医学研究科ディプロマ・ポリシー(修了認定・学位授与に関する方針)
医学に関する学術理論並びに応用を教授研究し、その奥義を究めて、文化の進展に寄与できる人材を輩出するために、以下の目標を達成した者に博士(医学)の学位を授与する。

  1. 独創的な研究によって従来の学術水準に新しい知見を加えた者
  2. 専攻分野に関し、研究を指導する能力を有する者
  3. 生涯にわたり研鑚をし、社会との架け橋となる自覚を有する者
  4. 研究者として強い責任感と高い倫理観をもち、医学・生命科学の発展に寄与できる者