基礎医療薬学講座 生体分子機能修飾学部門

講座紹介

研究室紹介

私たち生体分子機能修飾学部門は、「体に刻まれる化学変化」を読み解き、健康と病気の本質に迫る研究を行っています。私たちは日々、医薬品や食品、環境化学物質、さらには加齢やストレス、炎症など、さまざまな影響を受けています。これらは体内のタンパク質に「付加体修飾」と呼ばれる化学変化として蓄積され、細胞や微生物の働きを大きく左右します。私たちはこの付加体修飾を、“体が受けてきた影響の履歴”として捉え、なぜ病気が起こるのか、なぜ薬の効き方や副作用に個人差があるのか、といった根本的な問いに分子レベルから挑んでいます。さらに、これらの変化を「測る」だけでなく「制御する」ことで、より安全で効果的な治療や、病気を未然に防ぐ新しい医療の実現を目指しています。

私たちの目標は、「一人ひとりに最適な医療」と「病気を未然に防ぐ社会」の実現です。体内で起こる化学変化の違いを理解することで、薬の効果や副作用を予測し、より精密な医療へとつなげます。さらに、腸内細菌の働きを精密に制御することで、新しい治療や予防の方法の開発にも貢献していきます。

研究の特徴

多様な環境因子を“共通のしくみ”で理解する

医薬品、食品成分、環境化学物質、加齢や炎症など、一見異なる要因は、共通して生体分子に付加体修飾を引き起こします。私たちはこの「共通メカニズム」に着目することで、現実社会における複雑な環境影響(複合曝露)を統一的に理解する新しい枠組みを構築しています。さらに、体内に存在する「超硫黄分子」が有害物質を無毒化する新たな防御機構として働くことを明らかにしており、毒性や副作用の個人差の理解につながる研究を展開しています。

腸内細菌の“質”に着目した独自アプローチ

腸内細菌は、免疫・代謝・神経機能に関わる重要な生体システムです。従来の研究は「菌の種類や数」といった“量”に注目してきましたが、私たちは、タンパク質の付加体修飾によって腸内細菌の“働き”が変化する「質的変化」に着目しています。この独自の視点により、同じ菌でも機能が異なる理由や、薬・環境化学物質が腸内細菌の機能をどのように変化させるのかを分子レベルで解明しています。

次世代の創薬と健康評価への展開

腸内細菌の“質的変化”を制御することで、菌叢全体を変えることなく、特定の代謝機能のみを選択的に調整することが可能になります。これは、従来とは異なる新しい創薬・サプリメント開発の概念につながります。さらに、これらの変化を指標化することで、疾患リスクの予測や早期診断、個別化された健康管理といった次世代医療の実現を目指しています。また本研究は、「菌を増やす・減らす」という従来の腸活を超え、腸内細菌の“働きそのもの”を最適化する新しい腸活の提案にもつながります。

超硫黄分子による生体防御と機能制御

私たちの体内には、「超硫黄分子」と呼ばれる反応性の高い硫黄分子群が存在し、酸化ストレスや化学物質から生体を守る重要な役割を担っています。本研究室では、さらに超硫黄分子が環境化学物質や医薬品と反応し、タンパク質への付加体形成を制御することで、有害な影響を軽減する新たな生体防御機構として機能することを明らかにしてきました。
また、超硫黄分子は腸内細菌を含む多様な生体システムにおいても機能し、腸内環境変化に対する分子応答の鍵を担うと考えられます。私たちは、付加体修飾という共通メカニズムの視点からその機能を体系的に理解することで、生体防御の本質解明に加え、副作用の低減や新たな治療・予防戦略の創出につながる研究を推進しています。

環境と健康をつなぐエクスポソーム研究

私たちは、「エクスポソーム」という考え方に基づき、環境と健康の関係を包括的に理解する研究を進めています。エクスポソームとは、食品や医薬品、環境中の化学物質に加え、ストレスや加齢など、私たちが一生のあいだに受けるあらゆる影響の総体を指します。これらの要因は複雑に重なり合い、病気の発症や健康状態の違いに大きく関与していると考えられています。
特に私たちは、宿主の代謝や免疫に関わる「新たな臓器」として注目される腸内細菌叢に着目しています。腸内細菌は外界に近い環境に存在するため影響を受けやすく、便を用いて体に負担をかけずに調べることができます。従来の「菌の種類や数」といった変化に加え、私たちはタンパク質の化学変化(付加体修飾)を指標として、「働きの変化」に注目しています。この独自の方法により、環境の影響が腸内細菌を通じて健康にどのように関わるのかを分子レベルで明らかにし、新しい健康評価法の確立を目指しています。

研究に興味をお持ちの方へ

生体分子機能修飾学部門は、付加体科学を中核に、毒性学・微生物学・薬理学・医学を横断する融合研究分野です。独自の分子基盤を強みに、臨床課題の解決に挑み、未来の医療の創出を目指しています。本研究室では、新しい視点で研究に挑戦し、自らの発見で医療に貢献したい方を歓迎します。また、私たちは “Done is better than perfect” を行動指針とし、人的・金銭的・時間的コストと研究成果のバランスを意識した研究スタイルも大切にしています。

講座員

教員(専任)

役職 氏名 name
教授 秋山 雅博 Akiyama Masahiro
助教
中川 英嗣 Nakagawa Hidetsugu

研究業績

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2025年度業績

Formation of a reducing microenvironment and regulation of protein supersulfidation by gut microbial supersulfides.Jun Uchiyama, Yoshimi Shimizu, Takamitsu Unoki, Shingo Kasamatsu, Tomoaki Ida, Hideshi Ihara, Yun-Gi Kim, Koji Hase, Yuri Miura, Tomohiko Maehama, Maiko Kusano, Keitaro Umezawa, Masahiro Akiyama.Redox biology 92 104123-104123 2026年3月11日