昭和大学病院PCRセンターが行った新型コロナウイルス感染症の病院内アウトブレイクに関する分子疫学的解析が英学会誌に掲載
講演・発表
この研究成果は、英国the Healthcare Infection Societyの学会誌「Infection Prevention in Practice」に掲載されました。
研究チームからのコメント
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2019年12月に中国武漢で発生し、その後急速に世界中で感染が拡大したことをうけ、昨年3月に世界保健機構WHOによってパンデミックが宣言されました。本邦でも2020年1月16日の感染者初確認に端を発し、様々な要因を背景に5つの感染拡大の波が生じることとなりました。この感染症の特徴の一つとして、発症前もしくは無症状の感染者からも他者への感染がおこることが挙げられ、この性質が従来の疫学調査による感染リンクの追跡を困難とし、感染拡大につながる大きな要因となります。このような状況の下、感染拡大を未然に防ぐために従来の疫学調査をサポートするための新たな手法が求められていました。これまでに次世代シークエンサーから得られる全ゲノムシークエンスとハプロタイプネットワーク解析をCOVID-19の公的疫学調査に用いた報告はありましたが、病院内で発生した患者間の感染リンクの追跡に適応された例はほとんど知られていませんでした。
本研究では、昨年末から今年1月にかけて昭和大学病院で発生したアウトブレイクに関わった患者17名のSARS-CoV-2分離株と上記の解析手法を用いて患者間の感染リンクの追跡を行うことで、院内に発生したCOVID-19患者由来のウイルス株の系統が全てB.1.1.214であったこと、さらに少なくとも3つの異なるウイルス株が院内に持ち込まれ、それらを起源としてアウトブレイクが起こっていたことを示しました。このような情報に基づいて感染者間の接点を詳細に調べることで、より重点的な感染対策を講じることが可能になると期待されます。
過去20年を振り返ると、SARS、MERS、SARS-CoV-2と3種のコロナウイルスが発生し、多くの国でアウトブレイクを引き起こしました。この事実は、近い将来に新たなコロナウイルスが発生する可能性を示唆しています。このように新たなコロナウイルス感染症が発生した場合にも、今回の手法が有効である可能性が高いと考えられます。本研究の成果が今後の病院内の感染管理の一助になれば幸いです。
最後になりましたが、ご協力いただいた昭和大学病院PCRセンターのサポートスタッフの先生方にこの場をお借りして心より感謝申し上げます。
本研究では、昨年末から今年1月にかけて昭和大学病院で発生したアウトブレイクに関わった患者17名のSARS-CoV-2分離株と上記の解析手法を用いて患者間の感染リンクの追跡を行うことで、院内に発生したCOVID-19患者由来のウイルス株の系統が全てB.1.1.214であったこと、さらに少なくとも3つの異なるウイルス株が院内に持ち込まれ、それらを起源としてアウトブレイクが起こっていたことを示しました。このような情報に基づいて感染者間の接点を詳細に調べることで、より重点的な感染対策を講じることが可能になると期待されます。
過去20年を振り返ると、SARS、MERS、SARS-CoV-2と3種のコロナウイルスが発生し、多くの国でアウトブレイクを引き起こしました。この事実は、近い将来に新たなコロナウイルスが発生する可能性を示唆しています。このように新たなコロナウイルス感染症が発生した場合にも、今回の手法が有効である可能性が高いと考えられます。本研究の成果が今後の病院内の感染管理の一助になれば幸いです。
最後になりましたが、ご協力いただいた昭和大学病院PCRセンターのサポートスタッフの先生方にこの場をお借りして心より感謝申し上げます。

木内祐二 教授、石野敬子 教授