松本奈都美助教・藤田健一教授が日本薬物動態学会第36回年会で最優秀論文賞を受賞

受賞・表彰#薬学部

日本薬物動態学会第36回年会(11月16日~19日:Web開催)  で、松本奈都美助教(薬学部臨床薬学講座がんゲノム医療薬学部門)、藤田健一教授(同)が同学会の英文学会誌であるDMPK(Drug Metabolism and Pharmacokinetics)最優秀論文賞を受賞しました。
同学会は、創薬(新医薬品の創製)および医薬品の適正使用における薬物動態研究の発展性を先見し、1985年に創立されました。 DMPK最優秀論文賞は、同学会誌に前年に掲載された論文の中から編集委員の投票により選ばれ、特に優れた論文に送られる賞です。
松本助教と藤田教授は研究論文「6-Hydroxyindole is an endogenous long-lasting OATP1B1 inhibitor elevated in renal failure patients」が高く評価され、同賞に選定されました。

【受賞論文】
雑誌名:Drug Metabolism and Pharmacokinetics
論文名:6-Hydroxyindole is an endogenous long-lasting OATP1B1 inhibitor elevated in renal failure patient
(邦題:腎機能障害患者の血漿中に存在する内因性物質である6-ヒドロキシインドールは持続的にOATP1B1を阻害する)
著者名:Yusuke Masuo, Ken-ichi Fujita, Kenji Mishiro, Natsumi Seba, Tatsuya Kogi, Hidenori Okumura, Natsumi Matsumoto, Munetaka Kunishima, Yukio Kato
(増尾 友佑,藤田健一,三代憲司,清波夏実,小木達也,奥村英典,松本奈都美,国嶋崇隆,加藤将夫)
掲載日:2020年12月
DOI:DOI: 10.1016/j.dmpk.2020.09.001

松本奈都美助教・藤田健一教授のコメント

このたび、学位研究(松本助教)の一部として行った研究の論文が、2021年度DMPK最優秀論文賞に選ばれ、大変光栄に存じます。
当部門では、抗がん薬の体内動態や関連する遺伝子多型と薬物応答の関係を調べる前向きな臨床試験を行い、抗がん薬の至適投与法の樹立に向けて科学的にアプローチしております。
私たちは、昭和大学薬学部名誉教授宮坂貞先生が開発されたイリノテカンの至適投与についても臨床研究を進めて参りました。その中で、イリノテカンは肝消失型であるにも関わらず、透析を要するほど高度に腎機能の低下した患者においては、活性代謝物(SN-38)の消失が著しく遅延し、好中球減少が遷延することを見出しました。そのメカニズムの解明に金沢大学薬学部の加藤将夫教授らのグループと取り組んで参りました。受賞研究では、メカニズムの一端として、尿毒素の1つである6-ヒドロキシインドールが、化合物消失後もSN-38の肝取り込みに関与するトランスポーターであるOATP1B1を持続的に阻害(long-lasting inhibition)することを明らかにしました。
すなわち、6-ヒドロキシインドールは、直接的阻害ではない新たな機序でOATP1B1を阻害することを見出しました。この結果を、腎機能低下患者へのイリノテカンの安全な投与法の樹立に結びつけるべく、引き続き研究していきたいと考えております。
本研究の共同研究者である金沢大学薬学部の加藤将夫教授、増尾友佑准教授をはじめとし、本研究に関わっていただいた全ての皆様に心より御礼申し上げます。
今回の受賞を励みに、より一層、患者さんのためになる臨床ならびに基礎研究に邁進して参りたいと存じます。
藤田教授・松本助教写真)松本奈都美 助教、藤田健一 教授
2号館1階入口横、イリノテカンの成分であるカンプトテシンが単離された喜樹の前にて