昭和大学先端がん治療研究所と昭和大学病院乳腺外科共同の特定臨床研究で、アベマシクリブ誘発性の下痢に対する整腸剤(ビフィズス菌製剤)の予防効果が乏しいことを明らかに

その他#先端がん治療研究所

アベマシクリブは細胞周期を阻害する分子標的薬で、ホルモン受容体陽性HER2陰性の進行再発乳がんや早期乳がんに適応がある薬剤です。この薬剤を服用すると約9割の患者さんが下痢を経験することが知られており、QOLの低下の一因になるとも言えます。これに対して整腸剤が汎用されています。
2019年12月から2020年12月に、西日本がん研究機構の支援を受け先端がん治療研究所が実施した、「アベマシクリブ誘発性下痢に対するビフィズス菌整腸剤の予防効果およびトリメブチンマレイン酸塩の治療効果を検討する非盲検無作為化第二相試験(MERMAID試験)」では、アベマシクリブを服用する53人の乳がん患者さんにおいて、整腸剤による下痢の予防効果を調べました。患者さんの症状日記により中等度以上の下痢発症割合を求め、過去の治験での下痢の発生割合を基に予防効果を評価しました。その結果、約半数以上の患者さんに中等度以上の下痢が認められ、整腸剤の予防効果は乏しいと判断されました。

【論文情報】
・タイトル:Efficacy of probiotics and trimebutine maleate for abemaciclib-induced diarrhea: A randomized, open-label phase II trial (MERMAID, WJOG11318B)
・掲載誌:The Breast
・著者:Hiroko Masuda, Yuko Tanabe, Hitomi Sakai, Koji Matsumoto, Akihiko Shimomura, Mihoko Doi, Yasuo Miyoshi, Masato Takahashi, Yasuaki Sagara, Shinya Tokunaga, Tsutomu Iwasa, Naoki Niikura, Kenichi Yoshimura, Toshimi Takano, Junji Tsurutani
・DOI:https://doi.org/10.1016/j.breast.2023.07.003

鶴谷純司所長のコメント

乳がん治療薬(アベマシクリブ)でおこる下痢の予防に整腸剤を用いる科学的根拠は得られませんでした。先端がん治療研究所は、抗腫瘍薬の効果を増強させる研究だけでなく、副作用を低減する支持療法の開発にも力を入れています。がんと共に生きる患者さんのQOLの維持向上を支援いたします。
サムネ昭和大学先端がん治療研究所のメンバー