八島広典助教が第33回日本メイラード学会年会で若手研究者奨励賞を受賞
受賞・表彰#医学部
同学会は、フランスの科学者Louis Camille Maillard博士(1878-1936年)の人名に由来するアミノ基とカルボニル基の間で起こるアミノカルボニル反応である「メイラード反応」の研究に特化した学会です。「メイラード反応」を経て生体内で生じる終末糖化産物(AGEs)が、動脈硬化、がん、アルツハイマー病、腎臓病、骨粗鬆症、歯周病、不妊症など種々の加齢性疾患の病態や発症の起源となることが、同学会での研究により解明されてきています。
八島助教は演題名「メトホルミンはAMPK活性化を介してCdk5-CD36経路を抑制し、マクロファージ泡沫化拮抗作用を示す」の発表が高く評価され、同賞に選定されました。
八島広典助教のコメント
糖尿病患者の体内で生合成される終末糖化産物(AGEs)は、還元糖とタンパクがメイラード反応と呼ばれる非酵素的な反応で生じる蓄積性物質です。このAGEsが生体内にもたらす影響を対象として我々は日々研究を重ねております。今回、受賞対象となった研究テーマのメトホルミンという薬剤はフレンチライラック(ガレガソウ)に含まれるビグアナイド薬剤の研究過程で発見された、古くからある経口血糖降下薬です。UKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study=イギリスで行われた2型糖尿病患者を前向きに疫学研究した有名な臨床試験)をはじめとする数々の大規模臨床試験で示された優れた安全性と有効性から、現行の欧米の糖尿病学会が提唱する2型糖尿病患者の薬剤選択アルゴリズム、そして日本糖尿病学会の同アルゴリズムで高い優先順位で導入が推奨されており、臨床上非常に大切な薬剤です。とくに動脈硬化症の初期変化では、酸化LDLを取り込んだマクロファージがプラーク内で泡沫化しますが、我々基礎研究グループは、過去にAGEsがこの泡沫化進展に悪影響をもたらすことを明らかにして、その細胞内メカニズムをRAGE-Cdk5-CD36
Axisと名付けました。さらにこの度マウスモデルにおいてこの経路への影響を介してメトホルミンがマクロファージの泡沫化を抑制する細胞内メカニズムを有する可能性を示しました。このような研究を通じて、将来的にはAGEsの老化メカニズムを解明するとともに、メトホルミンの抗動脈硬化的作用を示すための基礎的理論構築に寄与したいと考えています。
受賞にあたり、ご指導ご鞭撻を賜りました主任教授の山岸昌一先生、ならびに基礎研究グループでご指導いただいた森雄作准教授・寺﨑道重講師、また研究に関わった全ての先生方にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。
受賞にあたり、ご指導ご鞭撻を賜りました主任教授の山岸昌一先生、ならびに基礎研究グループでご指導いただいた森雄作准教授・寺﨑道重講師、また研究に関わった全ての先生方にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。
