「第5のがん治療法の確立を目指して」再生医療を用いた医師主導治験の実施決定を記者発表

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4月26日、昭和大学病院腫瘍内科による記者発表が開かれ、がん患者さんを対象とした「間葉系幹細胞」を用いる医師主導治験の実施を決定したことが発表されました。
発表では、現在のがん治療である外科治療、放射線治療、化学療法、免疫療法は、4大治療にもかかわらず十分ではないことが挙げられました。そこで、新たに間葉系幹細胞を用いたがん治療法の開発を進めることにより、がんが進行した患者さんの完治する割合をより高めることができる効果について説明がされました。

本医師主導治験は、免疫チェックポイント阻害薬が無効(耐性)になった、つまり一次治療の効果が得られなかった患者さんを対象とします。再生医療である間葉系幹細胞を用いることで、免疫チェックポイント阻害薬の耐性を解除し、再活性化させるという、世界で初めて"再生医療を活用したがん治療法の確立"の試みであることが示されました。
集まった報道関係者より、免疫療法との併用や、効果測定について専門的な質問が多数寄せられ、本治験への関心の高さがうかがえました。

治験の対象者は最大20名(免疫チェックポイント阻害薬治療後にがんの増大を認める非小細胞肺がん、食道がん、胃がん等の患者さん)、期間は2024年5月から2026年1月までを予定しています。

和田聡教授のコメント

第4のがん治療である免疫療法の登場により、遠隔転移を有するいわゆるStageⅣのがん患者さんでも治る時代が来ました。これはがん治療における革命とも言われております。そんな第4のがん治療が行われて約10年が経ちます。10年の間にStageⅣがん患者に対する治療の有効性も判明してきており、約10-20%程度の方が治癒できるようになりました。これは今までのがん治療を考えるととてつもなく凄いことではありますが、現代の治療に慣れてきた患者さんにおいては物足りない数字にもみえます。

そこで我々は、第4のがん治療を補いつつ新たな治療薬の開発に取り組んで参りました。それが今回医師主導治験で行う再生医療である間葉系幹細胞を用いた治療です。間葉系幹細胞は、次世代の再生医療としてGVHD治療及び脊髄再生治療として保険承認されていますが、がん治療においてはまだ世界的にも使用されておりません。我々はこれまでロート製薬との共同研究により、マウスモデルを用いて間葉系幹細胞のがん治療における有用性を証明してきました。本医師主導治験は、まさに我々の研究によって証明された研究成果を実践する機会であり、我々には効果を示せるという自負があります。まずはPhase1で安全性をしっかり確認し、Phase2で有効性を示せればと思います。

本ケースは、昭和大学で基礎研究したものを臨床応用するAll Showaを体現したものであり、今後もこのような活動を活発にしていければと思いますので、皆様のご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。

001記者発表の様子記者発表の様子
002挨拶:角田卓也教授(昭和大学病院腫瘍内科)挨拶:角田卓也教授(昭和大学病院腫瘍内科)
003治験の概要説明:和田聡教授(臨床薬理研究所)治験の概要説明:和田聡教授(臨床薬理研究所)
004挨拶:小林真一所長(臨床薬理研究所)挨拶:小林真一所長(臨床薬理研究所)