チーム医療の有用性を実感する参加型学習

昭和大学薬学部では平成18年度文部科学省の「地域医療等社会的ニーズに対応した質の高い医療人養成推進プログラム」の「臨床能力向上に向けた薬剤師の養成」のテーマに対して「チーム医療の有用性を実感する参加型学習」の事業計画を申請し採択されました。
チーム医療を学ぶ昭和大学薬学部の医療人教育の一端をご紹介いたします。
医師、歯科医師、看護師などと共に、これからの薬剤師は医療チームの一員として、患者中心の医療の担い手として適正で安全な薬物治療に積極的に参画することが社会から求められています。
しかし、従来の大学での医療人教育は各学部の専門性に特化されており、チーム医療を志向したカリキュラムはまれでした。
そこで、本事業では学部学生の時期からチーム医療で活躍できる薬剤師の養成を目指し、学年毎に段階的な目標を設定しています。
1年次はチーム医療の大切さに対する「共通基盤の構築」、2年次は「共同作業の開始」、3年次は「専門性の相互理解」をテーマとし、学部合同のグループ討議や実習、病院や地域での体験学習などの学部横断的な参加型学習を各学年で積極的に取り入れます。

医療人GP
「チーム医療」とは
医師・歯科医師・看護師・薬剤師などの複数のスペシャリストがチームを組み、協力してケアにあたる医療形態です。医療の高度化・高齢社会の急速な展開・患者本位の医療の浸透の中で、チームで取り組むことにより、それぞれの専門性が生かされ、レベルの高い医療を提供できます。
「PBLチュートリアル」とは
PBL(Problem-based learning)とは、学生を少人数に分けて行なう問題立脚型の学習方法で、チューター役を務める教員が学生を臨床推論に即した思考過程の中に立たせ、知識の習得・統合・構築・応用を図らせることが目的になります。今日では従来のような、ある病気に対して同一の対処をするという方法から、チーム医療の中で個々の患者を中心として治療を考える方法が求められており、PBLチュートリアルは学習の段階でこうしたチーム医療を実践しようとする試みです。

1年生/共通基盤の構築

コース:医療人マインドの獲得と共感

ユニット1:チーム医療の基盤
将来、チーム医療で患者中心の医療を実施するために必要な共通の倫理観を醸成するために、医療チーム全体が関わるべき倫理問題、態度などをテーマにPBLチユートリアルと初歩的な医療コミュニケーション実習を4学部合同で実施する。
ユニット2:早期体験学習
医療・福祉の現状とそれを取巻く環境を理解し、医療チームの一員である薬剤師としてのモチベーションを高めるために、薬局・病院・福祉施設、衛生・行政施設などをグループで1日ずつ体験し、ハンデ体験と一次救命処置や自動体外式除細動器による救命蘇生などの生命に関わる技能の実習を行なう。
討議、発表も含め学部合同実習を多く導入する。
昭和大学富士吉田キャンパス

2年生/共同作業の開始

コース:医療・福祉のプロセスを体験する

ユニット1:診療の流れを知る
診療が各医療専門職の協力・連携によって行なわれていることを理解するために、学部横断で病院・診療所の外来診察から処方に至るまでのプロセスを見学する。
ユニット2:福祉の現状を知る
福祉がどのような職能とシステムの下で実施されているかを理解するために、学部横断で高齢者福祉・在宅医療・居宅介護に関する技能の実習を行なうとともに、福祉施設や地域薬局などが関わる居宅介護の体験学習を実施する。

3年生/専門性の相互理解

コース:チーム医療で患者と薬に目を向ける

ユニット1:チーム医療による薬物治療
医療チームに薬の専門家が積極的に参加して、適正で安全な薬物治療を行なう必要があることを理解するために、4学部合同のPBLチュートリアルで基本的な症例について討議を行い、病態を解析して適切な薬物治療を提案する。
ユニット2:救急医療・外科医療と薬剤師
救急医療と外科医療におけるチーム医療の重要性と薬の専門家としての薬剤師の果たす役割を実感するために、救急・外科医療および麻酔に関する専門知識を学習し、救急医療、外科医療の体験実習を行なう。実習終了後、チーム医療の重要性と麻酔関連薬の有用性について検討する。