ご挨拶

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昭和大学発達障害医療研究所
所長 太田晴久

 昭和大学附属烏山病院にて、2008年に成人発達障害の専門外来が開設されました。想像を遥かに超える数の当事者の方々の存在が明らかとなり、本邦の精神医学界に大きな衝撃をもたらしました。相談を求めてこられる当事者は累計7,000人を超え(下図)、同時に当事者の社会参加へのスキル向上のために開いたデイケア登録者は400名に達しています。開発したデイケアプログラムの効果が広く共有され、2018年度より診療報酬での加算が認められるようになりました。
 多数の症例を経験する中で、同じ悩みをもつ当事者が多いことを私たちは実感し、その臨床経験により発達障害への理解が進みつつあります。一方で、脳の機能障害である発達障害について、生物学的な側面からも活発に研究されています。しかし、そのメカニズムは依然として不明な点が多く、また根本的な治療法については研究段階と言わざるを得ません。
 この国内最大の臨床集積をもとに、昭和大学の附置研究所として2014年4月に本研究所は発足しました。発達障害の原因究明、治療法開発、ならびにヒトが社会を形成するために不可欠な共感性などの解明を目指しています。本研究所では、発達障害の診療を担当する医師やスタッフのみならず、脳画像データ解析などを専業とする研究者が在籍しています。さらには、先端のMRI装置を中心とする様々な研究設備を用いて、多方面から研究することができます。

 本研究所は、文部科学省から共同利用・共同研究拠点(発達障害研究拠点)に認可されています。臨床・研究資源を、広く全国の研究者と共有し、発達障害研究を通して、ヒトの社会性・共感性への理解の深化に貢献していきます。


昭和大学附属烏山病院発達障害専門外来受診者数推移

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