経カテーテル大動脈弁移植術 TAVI

経カテーテル大動脈弁移植術(TAVI)は新しい治療法

日本では、毎年1万人以上の方が従来から行われている大動脈弁置換術を受けられ、胸部外科学会の調査結果では手術死亡率は1.9%です。この治療により余命が長くなり、なにより症状の改善により、日常生活が楽になります。しかし、開胸という胸をあける操作が必要となり、また大掛かりな人工心肺装置が必要な事、一時的に心臓を止める必要がある事などから、大動脈弁狭窄症が進行していて手術が必要と診断されても、高齢である・心臓以外に大きい病気がある・体力がないなどの理由で手術を受けられない方が多く、大動脈弁置換術が必要な患者さんの約半数しか手術を受けていないと思われます。

そこで開発された治療法が、経カテーテル大動脈弁移植術(TAVI)です。この治療はほとんど血管内で操作を行います。原理は、カテーテルといわれる細い管とワイヤーを心臓まですすめて、ワイヤーに沿わせて折りたためる人工弁を大動脈弁の位置へ持って行き、適切な位置で開くことにより移植します。この治療法は、フランスで開発され、2002年から行われるようになり、日本では2013年から行われるようになりました。現在、世界中で10万人以上の方がTAVIを受けられています。

TAVIは新しい治療ですので「カテーテル大動脈弁移植術協議会」という組織による認定を受けた施設でのみ行う事ができます。昭和大学病院では2014年4月より最新の機器を備えTAVIに適した専用の手術室(ハイブリッド手術室)の工事を開始し、2015年5月に完成しました。その後、施設認定を受け、2015年12月からTAVIを開始し、2023年末までには364名の方にTAVIを行い、大きな合併症なく手術に成功しています。

手術方法

通常、全身麻酔で手術を行います。足の付け根を約7mmほど皮膚小切開し、大動脈につながる大腿動脈にワイヤーを挿入し、ここから太さ5~6mm位のチューブ(カテーテル)を挿入します。場合によっては他の部位(腹部、肩、左胸など)を切開して血管や心臓を露出させてカテーテルを挿入することもあります。カテーテルを通して、血管造影装置(レントゲン)を使用しながら大動脈弁の位置に折りたたんだ状態の人工弁を留置します。手術は1~2時間程度で終わります。


手術が終わったら、麻酔がさめた状態で集中治療室へ移動し、1泊ここで経過観察します。手術翌日には食事が始まり、一般病棟へ移動しご自分で歩く練習(リハビリ)を始めます。多くの場合は手術後3~7日程度で退院になります。

大動脈弁狭窄症と診断されたら・・・

かかりつけの先生に紹介状を書いて頂き、TAVI外来(経カテーテル大動脈弁移植術外来)を予約して頂き、受診してください。受診された日に、心臓超音波検査を行い、治療が必要な大動脈弁狭窄症かどうかを診断します。治療が必要な大動脈弁狭窄症であれば、約1週間の入院で、細かい検査を行い、循環器内科と心臓血管外科が合同でカンファレンスを行い、治療方針を決定致します。