形成外科

診療科紹介

形成外科は、先天性、あるいは後天性に生じた身体組織の形態異常や欠損などに対し専門的な治療を行う外科系診療領域です。頭部、顔面から体幹、外陰部、四肢末端に至るからだ全体を治療対象とし、特殊な縫合法や顕微鏡手術をはじめとする形成外科特有の手術手技を用いて様々な組織の修復、移植、再建を行います。診療を通じてみなさまの生活の質 "Quality of Life" の向上に貢献することが、私たち形成外科医の目標であり、喜びです。
DSC04733(髙木)_加工済診療科長
髙木 信介

診療体制

現在、形成外科専門医4名を含む常勤医師6名(1名救急診療科出向中)が診療を行っています。外来診療は主に平日の午前に行い、手術方針はカンファレンスを経て決定しています。手術日については、全身麻酔手術は火曜日、木曜日に、局所麻酔手術は平日の午後に行っています。また当院は日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会 乳房再建用エキスパンダー/インプラント実施施設でもあり、火曜日と金曜日には、乳腺外科と合同で乳癌切除後の一次再建も行っています。

診療方針

あらゆる治療には、その内容についての患者様のご理解とご協力が不可欠です。そして、治療方針の決定には、患者様の御意思が最大限に尊重されなくてはなりません。「手術するべきか」「手術以外の治療の選択肢は何か」「手術するとしたら術式は何を選ぶか」「手術のリスクや代償は」など、私たちは治療の選択肢、およびそれらの利点欠点について患者様にご説明し、ご理解をいただいたうえで治療を進めます。私たちは、患者様の様々な御要望にお応えするため、できるだけ数多くの治療の選択肢を提供できるよう、学会活動などを通じて最新の知見を集積し、日々研鑽に努めています。

特徴的な診療領域

形成外科の取扱い領域(次項参照)は多岐にわたりますが、顔面外傷、熱傷などの救急診療や、悪性腫瘍や外傷などに対して移植による再建手術を数多く行っていること、またこれらにMicrosurgery(顕微鏡を用いた手術)を積極的に運用していることが、私どもの特色といえます。Microsurgeryとは、手術用ルーペや手術用顕微鏡を用いて微細な手術を行う技術です。顕微鏡で患部を拡大することにより、従来困難であった、1mm未満から数mm程度の神経や血管、リンパ管の修復や吻合、移植などが可能となります。私どもはこの技術を非常に重視しており、悪性腫瘍により喪失した組織(骨、神経、血管、軟部組織、皮膚など)に対する組織移植や、虚血肢の血行再建などに適用することはもちろん、顔面外傷などにも積極的に適用することで、従来、見逃されがちだった神経損傷の発見、修復、眼窩壁再建の安全性や術後成績の向上などに役立てています。
こうしたMicrosurgeryを含む形成外科の手術手技は、他の診療科と連携した再建手術で特に有用であり、頭蓋を含む頭頚部再建、胸腹壁再建、乳房再建、外陰部再建、四肢再建、皮膚・軟部悪性腫瘍再建、など数多くの実績があります。

主な対象疾患

  • 顔面外傷(顔面骨骨折および顔面軟部組織損傷)
  • 体表面の先天的形態異常、母斑(いわゆるホクロやアザ)、
  • 悪性・良性腫瘍およびそれらに関する再建(乳房再建、頭蓋再建、顔面再建、胸腹壁再建、四肢再建)
  • 瘢痕、瘢痕拘縮、ケロイド、
  • 褥瘡、難治性潰瘍
  • 新鮮熱傷、凍傷、化学熱傷
  • その他(眼瞼下垂、眼瞼外反、睫毛内反、陥入爪、腋臭症、陥没乳頭、臍ヘルニア、毛巣洞、膿皮症、顔面神経麻痺、顔面痙攣など)
※2017年10月の診療体制の変更に伴い、現在、唇顎口蓋裂診療、レーザー治療、美容医療は行っておりません。

専門外来

形成外科

  • 形成ブレスト外来(乳房再建対象者専門外来:毎週月曜日)
  • 眼瞼下垂外来:生まれつき、または加齢などによる影響でまぶたが開きにくくなる症状に対して診察、手術をおこなっております。
    (奇数週木曜日午前、特殊外来)

より細かな診療内容や特色の詳細

乳腺外科と連携した乳房インプラントや自家組織移植による乳房再建の手術件数は、日本でも上位に入っています。

スタッフ紹介

医師名役職専門分野資格
髙木 信介准教授
診療科長
小児先天異常、顎顔面外科、顔面神経麻痺、手外科、乳房再建、頭頸部再建、重度四肢外傷再建、血管奇形、眼形成、皮膚悪性腫瘍・軟部悪性腫瘍、美容外科日本形成外科学会専門医
 日本形成外科学会形成外科領域指導医
 日本形成外科学会皮膚腫瘍外科分野指導医
 日本形成外科学会小児形成外科分野指導医
 日本形成外科学会再建マイクロサージャリー分野指導医
 日本創傷外科学会専門医
 日本手外科学会専門医
 日本オンコプラスティックサージャリー学会乳房再建エキスパンダー・インプラント責任医師
 乳房再建エキスパンダー・インプラント実施医師
玉川 慶一
助教
診療科長補佐
乳房再建、一般形成外科
日本専門医機構認定形成外科専門医
日本オンコプラスティックサージャリー学会乳房再建エキスパンダー・インプラント責任医師
森田 裕紀
助教(医科)
一般形成外科

岡本 笑奈
助教(医科)
一般形成外科

外来担当医表

形成外科

医療従事者の方へ

研究内容

(1)乳房再建
  • 3D計測機器を用いた乳房再建術前後の乳房の形態評価
  • 再建乳房形態の経時的変化
  • 合併症の発生率および発生に影響を与える因子の調査
  • 患者満足度の調査
  • 乳房インプラントの経時的変化
  • 3D計測器を用いた日本人の乳房形態に関する研究
  • 日本人の乳房形態を考慮した乳房インプラントの開発研究
  • 患者負担軽減と医療経済に配慮した再建術式の開発

(2)顔面・頭頚部再建
  • 顔面骨骨折固定材料(非吸収性および各種吸収性プレート)の術後成績の比較検討
  • 眼窩再建時における自家骨移植の生着過程に関する研究
  • 顔面人工埋入物移植に関する組織学的研究
  • 3D実体モデルの顎顔面領域手術への応用

(3)皮弁移植
  • マイクロサージャリーを用いた新しい皮弁の開発
  • 皮弁生着範囲の評価
  • 皮弁血行動態の観察手段
  • 皮弁の虚血再潅流障害における研究
  • 穿通枝皮弁の生着領域に関する研究
  • Microdissected thin flapによる整容的再建に関する研究
  • 微小血管吻合における添加剤のおよぼす血流変化の研究

(5)その他
  • 培養皮膚を用いたレーザー照射後の修復過程の研究
  • ケロイド・肥厚性瘢痕の分類・評価 に関する研究
  • 広範囲熱傷に対する自家培養表皮移植の臨床応用に関する研究
  • 電子顕微鏡を用いた、熱傷創における自家培養表皮移植に関する病理組織の研究
  • 慢性膿皮症関連疾患についての疫学的調査

診療実績

 2019年2020年2021年2022年
形成外科 新患患者数621489536532
形成外科 入院患者数178217307258

疾患別手術件数2019年2020年2021年2022年
外傷64809176
先天異常2236
2742
腫瘍248338
379443
瘢痕・瘢痕拘縮・ケロイド12
183024
難治性潰瘍22
62
4430
炎症・変性疾患21
292728
美容(手術)0
3
101
その他35
52
5385
レーザー治療0000
全身麻酔手術(小計)314
431
397410
腰椎・伝達麻酔01
33
局所麻酔手術(小計)110186261316
手術件数(合計)424
618
661729

※2020年からは、東病院診療実績との合算値

医療連携・紹介制度について

2017年の診療体制変更に伴い、唇顎口蓋裂診療は、昭和大学藤が丘病院の口唇口蓋裂センターに集約して行うことになりました。また、これまで行っていたレーザー治療については、機器移動のため、美容外科診療については、保険診療を優先するため、取り扱いをいったんお休みすることになりました。
ご紹介をご検討いただいている患者様が、当科の取り扱い疾患であるかどうか不明な場合は、お気軽に外来にお問い合わせ下さい。また、外来手術後から抜糸までの間、紹介元の先生方で創処置をして頂けるようでしたら、その旨、紹介状でお知らせ下さいますと幸いです。